魔王働く?
いつもの平和な王都リ・ワールド、新装開店したISEKAI CHINTAI前に黒いマント男が一人たたずむ
意見、冒険者に見えるその男の体には膨大な魔力が潜み、マントから見え隠れする肌は黒く、赤黒い髪に頭部に羊の角の生えていた…
「いらっしゃいま…」
元気よくお客様を迎えたイズミの口が途中で止まる…
「ククッ…我が来てやったぞ」
「…今月は家賃を払えるんでしょうね…シュナイザー…」
男…魔王シュナイザー、賃貸屋ISEKAI CHINTAIよりダンジョンを賃貸契約しダンジョン運営を行っている
ステータス上には魔王の称号、賃貸料金が払えずダンジョン産鉱物、素材で支払いを行っている
「ククッ…我を誰だと思っている!!」
「お!シュナイザーが今回は自身満々だな!」
テーブル席で男性客と話をしていたアキト、新装開店から臨時アルバイトとして現在働いている
「ククッ…アキトよ我も学習するのだよ…」
「これが今回の支払いだ!!」
重々しい音をたて受付カウンターに置かれる大量の金貨に入った袋の数々…
「確認しますね~」
ヒナタが金貨を数え始める中、イズミは不審そうにシュナイザーを見つめ
「シュナイザー…初めてじゃない? まともに賃貸料金を支払うなんて…」
「ククッ…」
-----1週間前-----
魔王の間にてシュナイザーはダンジョン内、魔王の間で王座に足を組み座している、周りには1000人の配下…と本人は言っているが実際は50人ほど…聖魔十人衆のうち9名が控えている
聖魔十人衆で魔王の秘書をやっている魔族の女性が前に出る
紫の長い髪に頭からは蝙蝠のような羽が生える、種族で言えば夢魔、サキュバス、知的なメガネを掛けている、角度を指で調整しながら片手に持っている書類を読み上げる
「シュナイザー様…今月の賃貸屋に支払う資金ですが…」
「ククッ…ビッチバスよ報告するがいい」
「金貨50枚ほど足りません…」
「「「「………」」」」
魔王以下、その場にいた物全員が黙り込み長い沈黙が続く
「ククッ…」
「ククッ…じゃありません、支払期限まであと1週間…しかし明後日より長期休暇にはいるようでそこから工事に入ると聞いています約2週間は支払いまでに時間が取れると思われます、だいだいですね…シュナイザー様? 貴方いつも玉座に座ったまんまで何もしてないじゃないですか? 我々聖魔十人衆と配下の物達でダンジョンの鉱物を掘ったり、魔物を倒して素材を集めたりダンジョン外で働いたり、自身の本業以外でも働いているんですよ? 」
書類で魔王の頭を叩きながらビッチバスが愚痴を漏らす、配下達も頷きながらシュナイザーを睨みつける
「「「「魔王様も働け!!」」」」
「………ククッ」
そして魔王シュナイザーは配下達に数時間の説教を受けたすえ、働くことになった…
王都には様々な職業がある…
1件目カフェラウンジ【HIGURASHI】、転移者転移者 日暮 楓が営む店であり現在は昼時、ランチを食べるために現在はかなり混み合っている、忙しく店員が働く中で店の厨房には魔王シュナイザーがいる
「おい! 米を研いでおけといったよな? できるといったよな? 」
「ククッ…米を研ぐなどこの魔王にとって造作もない事よ」
料理長が魔王の角を握りながら頭に拳骨を落とす
「洗剤で洗う馬鹿がいるか? 店長がいないから俺が使えるかどうが判断しようとしたが…不採用だ!! お客様から注文を聞けと言えば偉そうだと苦情が入り、掃除をしろと言えば何を戦おうとしている?! 」
料理長の顔がどんどんと赤くなっていき、プルプルと震えていく、周りの厨房で働く者たちが見ないようにしながら各自料理を進めている
「魔王だから偉いのは当たり前だ掃除だと? 雑魚どもを掃除すればいいんだろ? 」
「出てけ!! 」
魔王シュナイザーは裏口から蹴りだされる
2件目リ・ワールド王城、正門前守衛所、兵士たちに囲まれる魔王シュナイザーそして兵士長が代表として立っている
「ククッ…我を兵士として雇え! 」
「いや…いくらなんでも王城で魔王は雇えないな…いくらごっこでも」
「「……」」
兵士長の魔王ごっこ扱いに吹き出す兵士達と王城に訪れ守衛所に入城手続きを行っていた物達
「…ククッ…ごっこではない私は魔王だ」
「いや…本当に魔王と言うならよけいに王城に入れるわけにはいかないしもちろん働かせる事はできない」
王城でも魔王シュナイザーは働くことができなかった…
3件目賃貸屋ISEKAI CHINTAI、店のが跡形も無く、汚物処理施設の職人たちが作業を行っているそこへ魔王シュナイザーは訪れた
「ククッ…そうか長期休業中だったな…ククッ業者よ我を雇わないか? 」
「シュナイザー様…ここは俺がすでに働いているし、スライムも俺が捕獲して収入を得ているんだ他をあたってくれ」
「そうだそうだ! これ以上この職業に俺たち魔王軍が増えてもしょうがないんですよ? そこまでこの職業は余裕があるわけじゃないんだから俺たちの日々の給料と汚物処理施設の需要と供給のバランスが崩れかねないからこれ以上人ではいらないんですよ! 他の国なら別ですが」
従業員人数、そして年単位での汚物処理施設の依頼件数からみて従業員はこと足りており魔王シュナイザーは4件目汚物処理施設業者でも働くことが出来なかった…3件目はISEKAI CHINTAIである
5件目、リクドバーガー この世界ユクド・ヘイラで転生者がオーナーであり各大陸、各国々でチェーン店を開いている人気ハンバーガー屋である
「ククッ…いらっしゃいませ…ご注文はいかがでしょうか? 」
「ひッ…」
怖がる注文をしようとした女性客…違うレジへ並び直す…それを見て教育係りをしているベテランのチーフがシュナイザーの横へやってくる
「魔王君!お客様を怖がらせてはだめよ! スマイル スマイル! 」
「ククッ…スマイルだな!! 」
「…ちょっと怖いわね…恐怖心というかなんというか…威圧感が…もうあなたは笑わないでいいわ」
「ククッ…そうか」
そして次の客が魔王のレジへやってくる背中には巨大な剣を背負う冒険者の男性が注文をする
「勇者バーガーと賢者コーラのセット一つ」
「ククッ…勇者バーガーと賢者コーラーのセットだな…銅貨5枚だ…」
「あ! あと聖女ナゲットもください 」
「ククッ…聖女ナゲットのソースはお選びください 」
不慣れながらもレジを打ち込み注文を受けていく魔王シュナイザーをみながらチーフは頷きつつ
「うんうん…もう少し頑張ればレジ業ならできるようになりそうね…」
「ククッ…雇ってもらえるのか? 」
「…でも、被るからダメね… 」
「被る? 」
「ええ…もう魔王は間に合っているは…リスペクト…もろかぶり…この業界に魔王はいらないは」
「ククッ…」
魔王シュナイザーはユクドバーガーでも働くことはできなかった…そしてその後も何件も面接を受け、試験採用、テストをしてもらうがどれもうまくはいかず…そして時間はたち…そして現在
ヒナタが金貨の枚数を数え終わり、イズミはこめかみを抑えながら魔王シュナイザーを睨む…
「でっ…金貨が49枚足りないんだけど? …なんとか金貨3枚を自身の武器を質に入れて稼いだと…」
「ククッ…」
イズミの前で土下座をしている魔王シュナイザー…ヒナタやクロ―ド、アキトはその光景を見守っている
「…ビッチバスさんからすでに50枚相当の素材は貰ってるは…働こうとした努力は認める、今後も働く努力をしなさい…」
「すまない…配下、眷属たちにこれ以上迷惑をかけないためにも働く努力をしよう…」
イズミに謝罪を行い店からでていく魔王シュナイザー…彼が働ける日は来るのであろうか…天職との出会いはあるのであろうか…それは誰にもわからない
ISEKAI CHINTAI ~異世界で賃貸運営しています~ 八尋 @Yahiro_Sakura
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