第273話 廃棄物処理メシ
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
皆様のコメントやレビューなどは毎回全て読ませていただいてます。……が、ありがたいことに沢山のコメントをいただくようになったのもあり、返信がほとんど出来ておらず、それに関しては僕のキャパ不足ということで、ご理解いただければありがたいです!
さて、本題なのですが。
以前から本作のコメントなどに不適切な表現などを含む投稿をされている一部の方々がおられます。そういった投稿は我々作者側が知らぬ間にどうやらカクヨムの運営様により削除されていたようで、271話272話もいくつか削除されているようですが、コメントの内容自体はメールで通知が届くようになっているので全てこちらでも確認しております。
しかし、自分やキャラらに向けられる暴言や罵倒を読むのは気が滅入るしメンタルが削られるし非常にしんどいので、とにかく運営様から削除されないような書き方・内容でお願いしたいです。
下のカクヨムの方針にもあるように、不適切な投稿が続くと最悪の場合は該当アカウントにペナルティが加えられるかもしれず、そうなっても誰も得しないのと思うので、どうかよろしくお願いいたします。
↓カクヨムの方針
https://kakuyomu.jp/info/entry/kakuyomu_tips_2020atm
https://kakuyomu.jp/info/entry/review_rule_update_202109
また、271話の冒険者ギルドに行く前の部分に『主人公が事前に冒険者ギルドについて調べていた』と『調べてみて評判が良かった』という一文を付け足しておきました。
――――――――――――
それから色々ありつつニックさんに良さげな宿を紹介してもらい、そこに移ることにした。
「ここか」
そこは冒険者ギルド近くの大通りから一本入った裏道にあり、一見するとただの民家のような佇まいだけど扉の上の方に額から角を生やした馬が彫られた金属製のレリーフが取り付けられてあり、知る人ぞ知る……というか知らない人は絶対に気付かない感じになっていた。その名も『聖なる白馬亭』だ。
扉を開けて中に入る。
「らっしゃい。お、初見だな。誰かの紹介か?」
「はい。ニックさんの紹介なんですが」
と返すと、店主らしき髭面で筋骨隆々な中年男性が「ニックの紹介か……」と少し考える素振りを見せた後、僕の方を改めて確認してから「まぁいいだろう」と続けた。
ニックさんからこの宿の話は聞いている。基本的に一見さんお断りの店で、紹介がないと入れない店らしいのだけど、紹介があっても店主が認めなければ追い返される。そんな店らしい。
ニックさんが言うには礼儀さえちゃんとしていれば大丈夫らしく、それに『子供には甘いところがあるから問題ないだろう』なんていう微妙な気持ちになる言葉もいただいた。
「で、一泊か? 五泊か? 一泊なら金貨一枚、五泊で合わせて金貨二枚銀貨五枚だ」
この宿の特徴は連泊だと安くなるところで、実質半額になる。
ここが安い理由は、まず連泊中は内部の清掃が行われず、ベッドメイキングなんかもないとか。
「五泊でお願いします」
「分かった」
お金を払うと、店主はカウンターの中をゴソゴソしながら店の奥に「おーい!」と呼びかけた。
そして「はーい」という声と共に現れた若い女性に案内された二階の部屋に入り、扉を閉める。
「ふ~……」
ベッドに座り、シオンを出してから倒れ込む。
ベッドの寝心地も、土台の干し草がしっかりしていて悪くない。
とりあえずは前の宿より雰囲気は凄く良いし、店主は強面だけど人柄は良さそうな感じ。値段的にも安くなっているし、現時点ではかなりポジティブな評価だ。
本当は賃貸物件でも借りようかとと思っていたけど、ニックさんと話した感じでは役所への登録とか税金とかややこしそうで断念した。家に住むとなると本格的な定住を視野に入れる状況にならないとメリットが大きくないのかもしれない。
「さてと――それは新たなる世界。開け次元の
ホーリーディメンションを開いて中に入り、背負袋や魔法袋から買ってきたアイテムをどんどん出して床に置く。
「夕食の前に実験してみるか」
「キュ?」
「我々の今後の食生活を改善するための実験だよワトソン君」
「……キュ」
なに言ってんだお前は的な顔をされた気がするが、気にせずホーリーディメンション内に買ってきた陶器のお皿を並べていく。
そして一つの皿に水滴の魔法を使って水を入れた。
「シオン、こっちの皿に聖水を入れてくれる?」
「キュ?」
シオンは不思議そうな顔をしつつ、聖水を作って皿に入れた。
僕が魔法で作った水を入れた皿。その隣にシオンが作った聖水が入った皿が並ぶ。
「う~ん……。実験をするなら井戸水も使ってみるべきかな」
これから行うのはホーリーディメンション内でのオラン発芽実験だ。
目的としては、このホーリーディメンション内で植物を育てることが可能なのか調べる、というモノだけど、ついでだから水によってどんな違いが生まれるのかも調べてみたい。だって魔法で作った水とか聖水とか面白いアイテムがあるんだし、どうせなら試してみたいし。そうなると、一般代表として井戸水も用意しておかないと違いが分からない。
「後で井戸水を汲みに行こう」
しかし地面で色々と作業をするのはやりにくい。やっぱりテーブルは欲しいよね。これもどこかで入手したいところだ。
「次は、と」
背負袋の中から魔法書を取り出す。昼間に錬金術師の店で見付けたライトアローの魔法書だ。
ラージヒールが使えるようになっていたので、調べてみたら使えるようになっていたから買ってきた。
いつものように魔法書を読んで魔法を覚える。
「よしっ! これでまた新しい魔法を覚えられたぞ!」
「キュ!」
シオンと軽くハイタッチ? をして細やかに祝う。
今日はもう確かめられないし、明日にでも外に出てライトアローの威力を試してみよう。と、考えていると、宿の部屋の木窓がカタカタと揺れた。
ホーリーディメンションから出て木窓を持ち上げてみる。
「うわ、寒っ!」
窓の向こうの暗闇から冷気と共に粉雪が舞い込んだ。
この感じだと明日は積もってしまうかも。
「……防寒具って、本当にこれで大丈夫なのかな?」
ふと気になった。
毛皮の外套はあるし、手袋と靴下はぶ厚めのをアルッポで買ってある。でも、それで足りるのだろうか?
地球でなら大体の気温は地域ごとに分かるから、それに合わせて服装を選べばいいけど、こっちだとそんなモノはないし、判断基準がない。同じ雪が降る環境でも〇度前後とお湯が一瞬で凍る環境では意味が違うはず。
「シオンの防寒具は……いらないか」
「キュ?」
一瞬、どこかのお金持ちの犬が装備していそうな犬用のお洋服を想像してしまったけど、この世界にそんなモノが普通に売っているとは思えない。まぁシオンは基本僕が着ている闇のローブのフードの中だし、なくても大丈夫だろう。
それはそうとして、防寒について考えていく。
すると、重要なことに気付いた。
「……いや、そもそも部屋に暖房がないよね?」
というか、今までの町の宿でも暖炉がある部屋なんかなかったはず。普通に考えると各部屋に暖炉を置くなんてコスト的に無理なんだろうけど、そうなると冬は厚着をして凌ぐか温かい寝具を用意するのが一般的な冬のしのぎ方になるはず。けど普通の宿にはベッドと枕ぐらいは用意されていても布団はないわけで、寝具なんて持ち歩くわけにもいかない冒険者的には厚着をするしかなくなるはずだ。
「まぁ雪山登山にも暖房なんてないし、大丈夫でしょ、厚着すれば!」
近い内に冬用の衣服をもう少し増やさないとね。
そう考えていると階下で鍋底を叩く音がした。
「夕飯だ、行こうか」
「キュ!」
ホーリーディメンションを閉じ、階段を下りる。
食堂に入ると漂ってきたムワッとした香り。その中に包まれながら数人の冒険者が食事をとっている。
カウンター席に座り、カウンター中にいた恰幅の良い中年女性に部屋番号が書かれたプレートを見せた。
「飲み物はいるのかい?」
「じゃあラガーで」
「銅貨五枚ね」
おっ、やっぱり昨日の宿はボッタクリだったのだろうか? いや、そもそも昨日の店基準で考えるからアレなんだけど、ここでも他の町の倍ぐらいなんだよね。やっぱりこの王都の物価は高すぎるんだ。
などと考えている間に目の前に大きめのスープ皿がドンッと置かれた。
皿の中にはブラウン色のスープ。そのスープには様々な具材が浮かんでいる。かなり具沢山だ。
「ラガーだよ」
「ありがとうございます」
ラガーが届いたのでスープを一口、飲んでみる。
「旨い」
出汁がしっかり効いているし、塩味もしっかりしている。昨日の店とはやっぱり違う。
スプーンで中の具を持ち上げて確認してみると、野菜から肉やらキノコやら判別出来ないモノまで色々とゴロゴロ入っていた。
「聞いた通りだ……」
ニックさんによると、この店の裏側には表通りに面した大きなレストランがあり、そこで出された食材の余り物なんかがこの店に流れてきて、それらを全て鍋に入れて煮込んだモノがここの料理だそうな。
そういう廃棄物処――もとい、フードロスを産まない素晴らしいシステムのおかげでこの宿屋は低価格で運営出来ているのだ。
「最近、商人が――」
「――鉱石が少し――」
「いや、あれは――」
スープの具をほぐしてシオンに与えながら周囲の人々の会話に耳を傾ける。
こういう場所での誰かの世間話の中にも周辺情報を知るヒントがあったりするので面白い。
そうしてスープの中の謎の食材も美味しくいただき。その後で井戸から水を汲み上げ部屋に持ち帰り、ホーリーディメンション内に設置した皿に注いで、井戸水、魔法の水、聖水の三種類の水が入った皿の中にオランの種を入れた。
これがどういった結果になるのか、暫く様子を見ていこう。
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