『 大地に咲く花 』

夏川 俊

第1話、『 大地に咲く花 』

                          『 中点同盟 参画作品 』 


 何も無い、遥かなる不毛の大地・・・


 荒涼たる風が、虚しく航るが如く・・ 虚空なるは、その蒼き天空なり。

 過行く時は、ただある、無機質な風。


 築き上げし文明は、意図も簡単に消え去り、何時かは跡形も無く、砂塵に帰す。

 人は、何時しか、その斜陽とも言える、悠久なる時の過程に気付く。

 強固せしめたる構造の、その脆さに・・・



 謳歌の形見なる、瓦礫の欠片の間。

 僅かなる『 命 』の隙間に、今、一輪の花が咲く。



 人は、見よ。

 自然の叡智の気高さを。

 折られても、踏みにじられても・・

 一握の砂より芽吹きたる、命の力強さを・・・!

 根こそぎ倒壊した文明の跡地であっても、それでも何時か、花は咲く。


 我々は、未だ見ぬ君に、

 何を残して行けるだろうか。


 何時か生まれ来る君に、

 我々は、何を教えて行けるだろうか・・・



 忘却の闇より、陽は、また昇る。

 遥かなる自然の巡りと共に、何時しか夜は明ける。

 仰ぐ天空に、その陽を目に映す朝が、必ずや到来する。


 永久に還らぬ、過ぎ去りし『 時 』の尊さよりも、

 希望なる、明日の重きに託す幸せよ・・・


 今、我々は、一輪の花たらん。

 吹きたる風に揺られ、ただ静かに・・・

 明日に向かいて咲き誇り、その姿を知らしめる。


 君に。



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