第三話-情報屋アジト-
「おう、久しぶりだな。ちょっと教えて貰いたい事がある。」
ここは情報屋のアジト。情報屋というのは政府から目をつけられて情報屋として資格を与えられた組織群で元々はクラッカーやハッカーをやっていたような人や反社やマフィアのような組織に属していた人が多い。ほとんどが個人でやっており、独自のネットワークを持っている。ヒーローはここで情報を買い、問題が解決したら政府から精算されるシステムになっている。情報屋の中でもこいつはとびきり優秀な人物だ。
「おう、珍しいな。あんたが来るなんて。普段は情報屋は高過ぎる、ぼったくられるなんて敬遠してるのに。」
「今回ばかりは全く専門外でな。自分の足で稼ぐって言っても何をして良いか分からん。サイバー攻撃を受けた企業があって、攻撃を仕掛けたやつがアングラというんだが、アングラについて何か知ってる事はないか?」
「あー、アングラってのは最近良く聞く名前だな。ただ個人なのか組織なのかもまだはっきりとは分かってない。基本情報が20万円、ダークウェブの情報も加えて100万、俺独自の情報も加えて200万ってとこだな。」
「おいおい、高すぎないか。どんな情報かも分からんのにそんな情報買えんて。もうちょっと事前情報をくれ。こちとら解決出来なきゃ自腹なんだ。」
「相変わらずケチ臭い奴だなー。まぁ200万出せばほぼ解決出来ると考えて貰っても良いぜ。」
「その言葉信じるぞ。じゃあ200万出す!」
「おーけー。じゃあクレジットカードを預かるぜ。領収書の宛名はNo.46で良いんだよな?」
「あぁ、よろしく頼む。これで俺は今月もやしと米だけで生活しなきゃなくなりそうだ。じゃあ早速情報を貰おうか。」
「おーけー。まずアングラってのはここ1年くらい活動が活発になっている。ターゲットは大手企業のみで、要求する金額は無理なく支払える金額に設定している。入っている情報ではこれまでに10社が狙われているから大体月に1回くらいの頻度だな。支払いに応じた企業は8社で、ちゃんと約束を守って個人情報の流出はしていない。逆に2社は個人情報が流出してニュースにもなっている。表でも流出しているが、裏ではさらに詳細な情報が売買されている。結局その2社は支払いしたが、時すでに遅しでもう拡散されてしまっている。しかも厄介な事にその企業の執行役員とか社外取締役なんかの情報も明らかになってしまったから各所から避難を浴びたらしい。まぁこれくらいは調べりゃ誰でもすぐに分かる事だが、ここからはなかなか面白い情報だ。あるダークウェブ上にアングラの犯行予告が出ていた。それが菱井工業なんだが、おそらくお前が調べているのはその菱井工業なんじゃないか?」
「あぁ、その通りだ。まさかもう個人情報が売買されてるのか?」
「いや、さっきも言った通り犯行予告であってまだ何も情報は流出していない。そもそも本当にやるのかも半信半疑だったしな。しかも予告をしたのはおそらく今回が初めてなんだ。そこで俺は何故菱井工業なのかを調べた、そしてこの予告がどこから発信されたものかを調べることにした。」
「凄いな、それで何か分かったのか?」
「あぁ、面白い事が分かった。何故菱井工業なのかは分からなかったんだが、どこから発信されたものかを辿ったらすぐに分かったんだ。なんとそれが菱井工業のサーバーからだったんだ。普通ダークウェブでは海外サーバーをいくつか経由して足取りを分からなくするんだが、まさか菱井工業のサーバーから直接アクセスするなんて完全に素人の仕事だ。つまり何が言いたいかと言うとおそらく犯人は菱井工業の社員だ。そしてアングラの名前を語っているが今回はアングラが絡んでないんじゃないかと思うぞ。」
「お前怖いな!ここにいて調べるだけでそこまで分かるのか!間違いないんだよな?」
「当然だ。200万でも安いくらいの情報だっだろう?」
「それは分からん。正直そこまで分かってるなら俺じゃなくてそのままお前に解決して欲しいよ。」
「それは無理だ。俺は情報屋だからな。直接の依頼や捜査権限は与えられていない。しかしこれでもまだ安いと思えないとはお前相当ケチだな。」
「すまん、すまん。ありがとう。また頼むよ。俺も菱井工業の人間が怪しいと感じてたから腑に落ちたよ。」
「あぁ、だが菱井工業って言ったらでかい会社だそ。あてはあるのか?」
「もちろんだ。おそらくIT推進室の人間だと思う。ありがとう助かったよ。またよろしく頼む。」
すぐに菱井工業に向かわなくては。
「ところでアングラは今回絡んでないんじゃないかって言ってたよな?本物のアングラが勝手に名前を使われた事にキレて、攻撃してくるって可能性はないのか?」
「あぁ、それは俺も思ったが、邪魔されない自信があったんだろう。考えられる理由は主に3つだよ。
一つ、本物は既にどこかで消されるか誘拐されていて本物が出てくる心配はない。
二つ、本物と最初から結託しておりノウハウを教えて貰っている。
三つ、本物にバレないと安易に思って、名前を使った。
まぁ普通に考えたらいちだよな。それ以外はメリットに対してリスクがでか過ぎる。つまり今回の件を解決したら本物のアングラに繋がる手掛かりも見つかるかもしれないぞ。もちろん生きている前提だが。」
「なるほど。助かったよ。しかしなんで自作自演なんてしたんだろうな。入金したならまだしも入金もしてないのに全く理解出来ん。」
「知らんし、知りたくもないな。動機なんてのは気にしたって仕方ないだろ?ただなんとなく、とか注目されたかったとかそのレベルの考えで実行に移す人減もいる。世の中そんな論理的な人間は多くない。」
「まぁそうだな。とりあえず助かったよ!菱井工業に行ってくる。またよろしくな!」
「あぁこちらこそまたよろしく頼むよ」
よっしゃー、菱井工業に戻るか。
ヒーロー2021 @sera
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