NEW STAGE
りゅーと
第1話
いやーやっぱり東京は人が多いねー。
人に当たらないようにステップステップ、あ、誰かの足踏んだごめんね。
しかしこんなに人がいるとか絶対この中に暇な奴いるだろ?
用もないのにほっつき歩いてるだろ?
ん?
俺はパトロール中だからいいの!
「こんな平和なところだから裏路地とか覗いても人っ子1人いないんだろなぁ」
「おい!てめぇわざとぶつかってきただろ!?歩きスマホはいけねーよな?おじちゃん、肩折れちゃったかもしれねぇわ」
「慰謝料よこせや!」
「......」
平和だな!!!
背中にすごい量の汗をかきながら足早に通り過ぎようとする。
ああいうのに関わったら一族郎党呪われるのがオチだ。
しかも2人組なので、こんなひ弱な陰キャが立ち向かっても3秒で、ひでぶ!するだけだ。
しかし、絡まれているやつ凄いな、遠くから見てる俺でも足が震えて目が泳いでるのに、いっときもスマホから目を離してない。
「......ん?あんた達誰ですの?あっ、ちょっと待ってて、今いいとこですの!」
「おい!いつまでスマホ見てんだよ!?」
「こっちよこせや!」
「ちょ!やめるですの!」
スマホを取られ声を上げる少女。
年は俺と同じかそれより下ぐらいか。
しっかし可愛いのにこんな奴らに絡まれて大変ですねー。
やっぱり歩きスマホはダメですね。
そこに関してはあのヤンキーと同じ意見だ。
「アニキ、こいつ最近人気の『NEW STAGE』やってますぜ、しかも8位か、すごい頑張ってるねー姉ちゃん」
ん?
「へーじゃあお兄さんたちが『NEW STAGE』よりも楽しい事教えてやるよ」
は?
「それよりもこの武器たちを売った方がいい声で泣きそうですよ?」
「んじゃ、この灼熱の大鎌+99ってやつ売っちまうか」
おい待て。
「ちょっ!それは!」
「っざけんじゃねぇぞゴラァ!!!お前ら何?それ売ろうとしてんのか!?」
思わず飛び出してしまったが後悔なんてしてない。
血管が浮き上がってくる。
その武器がいかにすごいかこの馬鹿どもにレクチャーしてやる。
「その武器はなぁ、期間限定クエストで2057年7月24日の12:00から8月31日の0:00までの夏休み期間に開催されていたイベントクエスト『灼熱の谷に住む炎獣』でボスを倒した時にのみドロップするレア武器だ」
「ぶつくさうるせーな!めんどくせぇやつだなぁ」
馬鹿がよくわからない言語を喋っているが気にせずに話を続ける。
「しかもソロ専用クエストなのに対してクエスト難易度はかなり高い。初心者だったらボスまで行くのですら不可能な高難易度クエストだ」
「くそっ、なんだこいつさっきからぶつくさいいやがって!気持ちわりぃ!」
「アニキ、こいつやってやりましょう!」
「話を聞けカス共がぁぁ!!!」
「「は、はい......」」
「しかもそこのボス、灼熱のガルドスは近距離攻撃をランダムで繰り出す。遠距離に回ろうとしてもダメだ。ガルドスは遠距離攻撃に耐性を持っている」
「す、すいませんもうしません」
「そしてさっき、倒したらドロップすると言ったが、確率は5%。この確率とクエストの難易度のせいで諦めるプレイヤーが続出した、それなのに彼女は+99という栄光を成し遂げてんだぞ!?テメェらわかってんのか!?」
「「もう関わらないから勘弁してくれ!」」
やべぇ、言うこと言ってめっちゃすっきりした。
どれぐらいすっきりかというと長時間我慢したうんk
「あなた結構なNSオタクですのね!」
NSとは『NEW STAGE』の略称である。
というかこいつよく見るとすんごい可愛い。
金色の長く腰にまで届きそうな髪、おそらくハーフだろうかと思わせるそれは路地裏なのにも関わらず自ら光を放っているかのように眩しく、美しかった。
顔立ちは非常に整っており、ここを3次元だと忘れさせるくらいだ。
出るところも出てまさに完璧美少女という言葉がぴったりだった。
「まぁな、お褒めに預かり光栄ですよ、お嬢様」
「お嬢様って、なんだかいい響きですの!あなた私を助けてくれたしNSオタクだし気に入りましたの。良かったらお茶でもしませんこと?安心して、お礼にお金は私が出しますの」
あなたは女神か。
最近あんまり食べてないし、高校に入る時に1人暮らしになったため、自炊ができない俺はカップ麺ばっかり食べていた。
なんとも魅力的な提案だ。
今回ばかりは俺のNSオタクぶりを評価したい。
「お前が出してくれるってんなら断る理由はないな。ぜひご一緒させてもらうよ」
「私が最近見つけたオススメのお店がありますの!案内するですの!」
そうやってにかにかと笑う彼女を見ていると、こんなに可愛い人間がこの世にいたのかという悦びの涙が出そうだった。
しかもこんなお嬢様っぽいやつのオススメの店とか絶対お高いやつだろ!
今から楽しみになってきたぜ!
―ん?
ついた店は、おおっと庶民の味方ファミリー〇ートではないですか。
まさかここに入るなんてことは......
(ふぁみふぁみふぁみー〇ふぁみふぁみ〇〜)
軽快なステップを踏み自動ドアをくぐる彼女を見ているとさっきのとは違う涙が。
最近見つけたのか......。
まぁおごってくれるっていうし何も言わんでおこう。
「あなたは綾鷹派?おーいお茶派?」
「......綾鷹で」
選ばれたのは綾鷹でした。
「選ばれたのは綾鷹でした」
「エスパーか!?」
「ちょっとノリで言いたくなったんですの!こんなシチュエーションだと誰でも思うにに決まってますの!」
「まぁ、その通りだな」
綾鷹二つをレジに運び、会計を済ませた後フードコートへ。
「やっぱり綾鷹はおいしいですの。まるで急須で入れた緑茶みたいですの」
それが売りですからね。
「それよりお前なんであんなとこいたの?」
「お前じゃないですの。私には八王子 咲という立派な名前がありますの。咲と呼んでくれて構わないですのよ?」
「ああ。分かったよ咲。俺の名前は神宮寺 瀧だ。俺のことも瀧って呼んでくれで構わないよ」
なんだこれ!
意外と話せてる!
あれか!
一般人だとキョドるけどオタクだったらめちゃくちゃフレンドリーに話せるっていうやつか!
それにしてもこれってデートっぽいじゃないですか!
違いますか、そうですか。
ごくっと綾鷹を飲む。
まるで急須で入れた緑茶みたい。
「それより瀧は左利きなんですのね?それに会った時からポケットにずっと右手を入れたままですし、どうしたんですの?」
「いやいや、気にしないでくれ。癖みたいなもんなんだ」
その後、NSについて熱く語り合った後、日も暮れてきたのでお開きとなった。
にしても女子と喋る時間楽しすぎ。
世界が変わるわ。
「また会いましょうですの〜」
「そん時はまたNSの話しような」
手を振って別れる俺と咲。
ふぅ......帰ったら本気でやるか。
って違う違う!
アレじゃないよ?
いやマジで。
月曜の朝ってなんでこんなに疲れるの?
呪いか何かなの?
昨日の幸せが今日という不幸せにイマジンブレイカーによって壊される。
上〇さん働きすぎ。
今日も不幸せな一日が始まるのか。
まぢヤバイ。
ちなみに俺は井ノ森高校に通う高校2年生で、彼女いない歴=年齢の童貞チェリーボーイだ。
登校も何もイベントはなく、靴箱にはもちろんラブレターなんて代物は入っていない。
代わり映えのしないいつもの日常。
教室につくなり席に座り、鞄を下ろす。
ほんとに学校ってめんどくさ......
「あら、瀧ですの!?あなたこの学校の生徒でしたの?しかも同じクラスなんて奇遇ですのね!」
くねぇ!!!
最高の学校生活が始まると思うと胸が躍る。
俺たちの戦いはこれからだ!
1年の時はこんな美人いなかったろうから、多分2年に上がる時のクラス替えで一緒になったのか。
というか2年生になったばかりだがこんな美人に気づかなかったとは我ながら鈍感なやつだ。
しかし、昨日知り合ったことであちらからしゃべりかけてくれた。
なんという幸運。
ありがとう、上〇さん!
「おはよう咲。2年から3年に上がる時はクラス替えがないみたいだし、2年間よろしく頼むよ」
「ええ!NSの話いっぱいしましょうね!」
俺は笑顔でうなづく。
本当にNSが好きなんだなぁと思う。
NSのおかげでこんな可愛い娘と話ができるんだ。
NSマジ神。
チョーリスペクト。
もう絶対辞めない♡
ここで奇しくもチャイムが鳴る。
普段はなんにも気にしていなかったが俺と咲の幸せタイムの邪魔をしたとあってはチャイムがたまらなく憎い。
1時間目は数学だった。
ってかどうでもいい。
(咲可愛いなぁ)
思わず顔がにやける。
席が少し離れているのが残念だったが、咲は前の席なので後ろの席の俺からすると絶好のターゲットなのだ。
ヤバイ、だんだんストーカーみたいな思考回路になってきた。
重症な咲大好き症だ。
おそらく不治の病だろう。
その時何処からか紙が飛んできた。
おっとぉこれが回し手紙というやつですか。
中学の時に俺だけ回ってこなかったあれですか?
中を開いて見ると
『昼休み、1階の階段下に来てください。大事な話があります。』
と書いてあった。
ふっ。
この俺にラブレターか。
だが俺には咲というスーパープリティエンジェルがいるのだ。
この告白を受ける気なんてさらさらない。
......よし、行くか!
―1時間目が終わり鼻歌交じりに1階の下にあるワンスペースに行くとそこには既に手紙の主と思われる栗毛色のふわふわした髪の可愛い系の女子が立っていた。
彼女も結構可愛い......はっ!
だっだめだ!
俺には咲という未来の妻が!!!
すると俺に気がついた少女がこちらに向かって駆けてきた。
「あなた確か神宮寺 瀧だったよね?」
「ああ、そうだけど俺に何か用か?」
というか多分同じクラスなんだろうけど名前が出てこない。
いかんせん俺は人とはあまり関わりたくないタイプなのでクラスメイトには特に興味が無い。
まぁクラスメイトも俺に興味はないだろうがな!
「アタシの名前は栗原 恵(くりはら めぐみ)よ!」
こう書くのよと言われ渡されたメモには粟原 恵と書いていた。
栗じゃないの?
粟って書いてあるけど。
しかし当の本人は真面目な顔をしているのでスルーしておこう。
「早速本題だけど、あなたに言いたいことがあるの」
「ほ、ほう。なにかにゃ?」
噛んだわ。
初めて受ける告白なのだ。
心臓がバクバクと音を立てているのがわかる。
「これ以上アタシの咲に近付かないで。あなた如きがアタシの咲に近づいていいとでもおもったわけ?身分が違うのよ身分が!」
「は、はぁ?」
告白じゃなかった。
恥ずかしい。
相手に告白だったと思われてないことが唯一の救いだった。
「その反応、もしかして告白だと思ったの?ばぁ〜か!!アンタなんかに告白するやつなんていないっての。ぷひゃひゃ!」
神は俺を見捨てた!!!
どうやら神様は俺のことが嫌いらしい。
別に悪口とか言ってないのに。
それになんて醜い笑い方なんだ!
「ちげーよ!ってかアタシの咲ってどういうことだ?」
「咲はアタシの親友であり、アタシと咲は付き合っているのよ!よく言うあれよ!運命の......えっ?赤?白?黄色?ねぇどれ?」
チューリップの歌かよ。
「......赤い糸」
「それよっ!運命の赤い板!」
あっ惜しい、あと1文字!
それだと死ぬ運命の魚を捌いた後のまな板だ。
それより確認事項が1つ。
「咲がお前と付き合ってる?そんなわけねーだろ、お前男なの?」
「ふざけないで!アタシは女よ!それに咲とアタシは本気よ!出てきなさい!」
その一声で3人の男が隠れていたところから顔を出す。
掃除用具箱から。
こいつら必死か。
しかし3対1はまずいな。
こちとら喧嘩なんてしたこともない平和主義者なのだ。
「こいつッ!」
「くたばれぇ!」
「咲様は僕のだぁ!!!」
「こら!最後の誰!?アタシの咲の名前を気安く呼ばないで!」
統率力0。
「ぐっ、がっ、ひでぶ!」
というかこの3人がちだ。
床に倒れた俺を更に足蹴りにしてくる。
容赦ねーな、こっちは死にそうだってのに。
「あなた達っ!瀧に何してるんですのっ!?」
WOWマイエンジェル!
なんてかっこいいご登場なんだ。
でも俺のこんな哀れな姿を見ないで!
「咲っ!?あなたはかの有名な......なんかあれのえっとー......咲っ!?」
言葉にできないなら言うなよ。
しかもなかったことにするんじゃない。
「えぇ、私は咲ですのよ。というかあなた達誰ですの?なんで瀧をこんな酷い目に?」
4人の目が咲に向いている間に抜け出し、立ち上がる。
「というか咲今なんて言った?」
「私は咲ですのよ!」
ドヤ顔で返される。
可愛い......じゃなくて。
「その次だよ」
「というかあなた達誰ですの?ですの?」
ですのが多いですの。
「お前付き合ってるどうこうの前に知り合いですらねぇのかよ!」
「咲っ!友達から始めましょう!」
こいつあれかアホの子か。
あれ?
他の3人は?
まさか咲にこんな所見られると嫌われると思ったから逃げたのか?
なんて薄い関係なんだこのアホと掃除用具箱3人組は。
「じゃあ問題ですの。ででん!NSのクエスト『クイズ好きの少女の落し物を探せ』の落し物は?」
なんでいきなりNS問題?
よく分からないが、これはアホにはきつい問題だぞ。
こいつにわかるのか?
それは置いといて、問題の音を自分で言う咲めっちゃ可愛い。
「咲が好きなNSについてはあらかじめ調査済み。答えはハンカチよ!」
あ〜、やっぱりか。
こいつには荷が重いか。
なんてったってアホだからな。
「......瀧の答えは?」
「傘だ」
「だから瀧は大好きなんですの!」
ちょっ、え?
やだもぅ〜、とオカマみたいになるくらい驚いた。
大好きだって?
萌え死ぬわ。
「ちょっとどういうこと?ハンカチを届けたらクエスト成功のエフェクトが出てクリアになったはずよ!」
それ表向きだけなんだよねぇ。
アホがよく引っかかる本当に単純なクエスト。
見た瞬間違和感に気づくだろこんなの。
「瀧、説明をどうぞですの」
「あぁ、ハンカチはブラフだ。もちろんハンカチも重要な役割をしている。お前はそのハンカチに違和感を覚えなかったか?」
栗原は首をかしげ考える仕草をした後さっぱりと言ったように首を横に振った。
「そのハンカチをアイテム欄で選択すると、使う、捨てるのウインドウが出るんだ。普通落とし物のハンカチに使うなんて選択しないだろ?そこで使うを押すとハンカチの間に紙が挟まってるんだ」
「そこから先は私が説明しますの。その紙には『たかたさがたなたい』と書いてあるんですの。そのクエストの発注主の名前がタヌキ。そしてその紙からタを抜くと」
「あっ!かさがないってなる!だから傘だったのね!」
そもそもクイズ好きの少女ってところと名前がタヌキってところで怪しいと思うんだがこいつアホだから気づかなかったのかな。
「ちなみに傘を探して渡すと10000J多くもらえる」
Jとは『NEW STAGE』の単価である。
「薬草1000個分ですの」
そんなに買う人いないけど例え方がわかりやすい。
「私とお友達になりたかったら私や瀧と同じかそれ以上にNSを知ることですの」
いや、簡単なやつでこれだから難しいと思うぞ。
このアホには。
それに咲の友達の基準ってNSなのか。
咲って友達いるのかなぁ......。
それに、そんなにNSの知識持ったやついんのかね?
「わかったわ。NSをもっと勉強して咲の友達になるわ!」
そう言って栗原は足早に階段をかけていった。
忙しいやつだな。
「ところで瀧?」
「なんだ?」
「なんであなたあんな状況でもポケットに手を入れていたんですの?癖だとしてもちょっと異常ですの」
真剣な瞳をこちらに向ける咲。
俺は少し考えてから口を開く。
「流石にそこまで聞かれたら言うしかないな......」
右手をポケットから引き抜くと真剣な顔だった咲がポカンとした顔になる。
「スマホ、ですの?」
「ああ、スマホだ」
「ずっとスマホ触ってたんですの?」
普通ならそう思うよな。
「いや、ずっとプレイしてた」
「あんな状態で!?しかも画面を見ずに!?」
「まぁ、そういうことだな」
「ということはヤンキー相手に知識を披露された時も、コンビニに行った時も、授業中もですの!?」
「授業中も見られてたのか、まぁそうだな。ずっとスマホしてたよ」
「何でそんなことをしてるんですの?何をプレイしてるんですの?」
おおう、興味津々のご様子。
だが、中学の時これが見つかった時、見られてしまった中に偶然当時好きな女の子がいて、その子に
「流石にそこまでするのはきもい、てかやってるのゲーム?うぇっ!余計にきも!」
と言われてから人に話すのがある種のトラウマになってしまった。
「後者の答えはNSだ」
「やはり。あの知識は普通の方ではありえないものですの。ではもう1つの答えは?」
「それはただ単純だよ。歩きスマホは危ないし、授業中にやってたら没収される。結果こうなったんだ」
「なるほど。それは納得できましたがコンビニで私と話している時は出してもよかったんではないですの?」
それ言わなきゃいけないのか。こうなったらやけだ。
「......だよ」
「ん?なんですの?」
「すっごく可愛くて魅力的な女の子にこんなことしてるのがバレてきもいって言われたくなかったからだよ!」
言ってやった、言ってやったぞ。
もうここで振られても後悔はしない。
短い時間だったがNSの話が可愛い女の子おできてとても楽しかった。
だがこれで終わりとなると残りの高校生活が灰色の思い出になるだろう。
逃げるように階段を登る俺の手がぐっと引っぱられる。
「なんで逃げるんですの?誰もきもいなんて言ってないですの。というかそんな手があったかと感心してるんですのよ?」
「!!!......俺をきもいと思わない上に感心なんて......そんな事言われたの初めてだよ。やっぱり......好きだなぁ」
「そ、それは告白と受け取っていいんですの?」
あ、あれ?
俺告っちゃった?
さっき言ったことを思い出す。
あ、これ完璧告ってる。
死ぬほど恥ずかしい!!!
「こっち向くですの」
「い、いや、死ぬほど恥ずかしいから勘弁してくんない!?」
「いいからこっち向くですの!」
繋がれていた手を強引に引かれ咲と向かい合う。
「私も......死ぬほど恥ずかしいんですのよ?」
そこには茹でダコみたいに真っ赤な顔の咲がいた。
「告白するなら......しっかり告白するですの......」
やばい流れで言ったのとは違い本気で言うとなると死ぬほど恥ずかしい。
さっきから死にまくりだ。
だが、ここで言わないといけない気がした。
気持ちを伝えたいと思った。
「俺は咲のことが好きだ」
「それはNSよりですの?」
「その質問はちょっと卑怯じゃないか?」
「ぷっ、ふふ、そこは嘘でもNSよりも好きって言ってくれないと。でも、私もNSと同じくらい瀧のことが好きですの。ヤンキー達から私を救ってくれたあの時から」
「ええっ?そんな時から!?全く気づかんかったぞ!?」
「普通ヤンキー相手にネトゲの知識で怒鳴り散らさないですの。でも、それが私にはすごくかっこよく見えたんですの。それと同時にNSについて語る瀧はとても輝いていた。こんな人が彼氏だったらなぁって家に帰ってずっと思ってましたの!こんなに好きになった責任、とって下さいますわよね?」
さらに真っ赤になりながら咲が言う。
咲と話す度に咲のことがどんどん好きになっていく。
大好きな人に責任を取れと言われたらとるしかないだろう。
「ああ、俺の隣に、俺が死ぬまでずっといて欲しい......あとNSのマルチとか」
「ぷっ、ふふ、私たちらしいですの......はい、私を瀧の彼女にしてくださいですの」
そして俺達は抱き合った。
チャイムの音すらも聞こえないくらいに深く強く。
俺が咲を抱く力が強くなると、咲も負けじと俺を抱く腕の力が強くなる。
心地いい。
ずっとこの感覚に浸っていたい。
―しばらくした時、先生に見つかりかけたので、教室に戻ってきた。
抱き合っていた時は時間が一瞬で過ぎていったのに5時間目、6時間目は時間が過ぎるのがすごく遅いように感じた。
俺の時間だけが止まったようだった。
勿論ポケットの中でNSはやってますがね。
授業中に後ろを向いて手を振ってくる咲。
めっちゃ可愛い。
「咲〜」
アホの子が悲しい目をしているが知ったこっちゃない。
―放課後、俺と咲は並んで下校していた。
「そう言えば瀧のプレイヤーネームは何ですの?」
「神だな」
決して、自意識過剰とかそういうのではない。
俺の名前が神宮寺だから、その中から神を取っただけだ。
「ん?......神?」
ぴくっ、と立ち止まり、フリーズする咲。
暫く固まっていたが、俺が目の前で手をブンブンと降ると意識を取り戻した。
「ねぇ、プリンスというプレイヤーネームに覚えは?」
プリンス?
そういやいたな、あれは確か......
「そいつが始めたての頃に色々レクチャーしたり、武器やらアイテムやらあげてたな。一応今もNSの中で連絡は取ったりしてるが、何?知り合いなの?」
「......それ、私ですの......」
「えっ?八王子......王子、あっ!そういうこと!?」
プリンスって言うくらいだから勝手にずっと男かと思ってたわ!
あれって咲だったのか!?
「......そんな前から私たちは......」
咲が俯いたせいで上手く聞き取れなかった。
「ん?何か言ったか?」
「なっ、何もないですの!それにしてもまさかランキング1位の神がまさか瀧だったとは」
そういえば言ってなかったな。
ランキングにはあんまり興味はないが、NSの掲示板見てると俺のことについての書き込みがめちゃくちゃあるので嫌でも意識させられていた。
8英雄の人達にもすんごい絡まれるし......。
「まぁ、一応1位だな」
「瀧がそんなに強かったとは......でっでも、先は長いですけど絶対に越してみせますの!」
ぐっと拳を高く掲げる咲。
「ふっ、かかって来い!越すどころか更に離してやるぜ!」
「ぐぬぬ。ってそういえばもう普通にポケットに突っ込まずにNSやってるんですのね?」
「歩きスマホしてても咲が隣いるし危なくないし、やっぱり画面見ながらやる方がいいしな」
「違いませんの」
2人で笑い合う。
俺と咲は長い道のりを進み、たどり着いた。
付き合うことによってそこから始まる第2の人生。
2人で挑む新たな舞台、『NEW STAGE』へ―
NEW STAGE りゅーと @takedatakeda
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