「えっめっちゃスクロールバーのつまみちっちゃいじゃん!」――と思ったそこの君。ブラウザバックするのは待ちたまえ。
確かにこの作品の一話は、一般的に供給される Web 小説の一話よりも長い。およそ二~三倍ある。けれども待ってほしい。
この話は、広丘さん(かわいい)と明科さん(かわいい)、二人の女子高生が、とりとめのないことを話しながら、彼女たち以外の誰ともかかわることのなくなった世界を旅する話――タイトルと紹介文から察せられるとおりの内容だ。ここでよさを感じられたなら、一話が一万字前後あろうが、一瞬で読める人だ。安心して読んでほしい。
まだ不安?
何をおいても、広丘さん(かわいい)と明科さん(かわいい)の間でかわされる会話の魅力の前には、一話の長さは問題ではない――どころか、こういうのが好きな人はきっと無限に読めるはずだ。ぼくは無限に読める。
軽妙でみずみずしい筆致で描かれた、しょうもなくて、どこかズレていて、ときどき本質的な、思春期の自意識をこじらせぎみの女子高生(かわいい)ふたりの等身大のやり取り。傷の舐め合いでなく、手を取り合って世界を歩いていく前向きさ――それがいとおしくないわけがない。
この二人がこの後どこへ向かってどんな世界を見てどんなことを話してどんなことに笑ってどんなことを思うのか、この先が描かれるのがとても待ち遠しい。
「流行に流されてヘラヘラ笑ってるパリピの事が大嫌い。だからと言って、アニメ漫画でブヒブヒ言ってるオタク達の輪に混ざるのも何だか……」
「自分は他人とは違う。自分はお前らみたいな下らない人間じゃない」
「誰も自分の事を分かってくれない。けれども、この世のどこかには真に自分を分かってくれる人がいるはず……」
思春期特有の苛立ちやこじれた自意識、それら青春の痛々しい傷口を否定せず、そっと慈しむような手つきでガールミーツガールに昇華させた期待の新作。
身もふたもない言い方をすれば、「誰も居なくなった世界で女子高生ふたりが手と手を繋いで生きていく」話だお前ら好きだろ百合だぞ俺は好きだ最高だろ。
ちょっぴりずれてる「あたし」こと広岡さん、めっちゃ喋るおとぼけJKの明科(あかしな)さん、二人ともが魅力的でとってもとってもキュートで、二人の会話を眺めていると愛おしさが湧いてくる。やばい。
地の分も、クスっとくるような言い回しや、誰もが一度は思った事があるような述懐に思わず「あるある~」「それな」などと言って読み進めてしまうこと間違いなし。
可愛い&可愛い。そして可愛い。ひろ×あかはいいぞ。