番外編:映画「サダメの恋」を観て
吾妻栄子の同名小説の映像化です。
ただし、原作小説とはかなり異なる点も目立ちます(原作が中篇小説なので二時間の映画にする上ではかなり追加エピソードやオリジナルキャラクターを要したようです)。
ヒロインを演じたのはオーディションで抜擢された新人の女優さんということですが、昔の水原希子に似た華やかな雰囲気です。
チャイナドレスを着た悪女、
原作では名前のない男主人公には「
原作では入水自殺しようとしたサダメを彼が偶然助けたように描かれていますが、映画だと元から商家で虐待されていた彼女を見掛けて案じていた設定に変えられています。
また、助けた彼女のその後を案じて再び雇い主の商家を訪ねると、サダメは既に暇を出されて会えなかったという切ないすれ違いのエピソードも追加されています(ちなみに原作ではただ同僚男性として出てくる『田口』は映画だと前世はヒロインと同じ商家の番頭で跡継ぎ息子の中村から店を奪うキャラクターに変えられています。現世でも中村と男同士でつるんでいるけれど、あの後どうなるかは怪しいという皮肉を込めた改変ですね)。
警視として捜査線上に浮かんだ悪女、黒鳳蝶になったサダメの写真を目にする場面にも運命の残酷さが漂います。
武智を演じた俳優さんは子役で有名だった人のようですが、ひたむきな青年が運命に弄ばれつつ突き進むキャラクターを良く演じていました。
しかし、圧巻はやはり上海マフィアの李笙霖とシンガポール人実業家のケネス・リーを演じた香港スターの彼ですね。
率直に言って男主人公より存在感があり、登場すると画面が引き締まる感じを受けました。
他のキャラクターは前世と現世のどちらかに違和感のある人が目立つのですが、この人はパナマ帽を被った戦前の服装も現代のスーツ姿も実に良く似合っています。
ちなみに映画のオリジナルキャラクターで東亜楼で働く中国人使用人の子(サダメはこの子に過去の自分を重ねて可愛がる)として出てくる女の子はこの香港スターの実のお嬢さんとのことで、こちらも可憐さが目を引きます。
豪華に見えてどこか虚しい東亜楼の内装(サダメの内面の反映でしょうか)や戦前日中での流行りの曲など当時の風俗描写も興味深かったです。
好みは分かれますが、一見の価値ある映画です。
*monogatary.comのお題「架空の映画批評」からの創作です。
サダメの恋 吾妻栄子 @gaoqiao412
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