第55話 住居確保給付金の支給対象者が拡大されるよ(セーフティネットの話)

 『住居確保給付金』の支給対象が2020年4月20日より拡大される。

 これまでの支給対象は『離職・廃業から2年以内の方』だ。それに加えて『本人の責任ではないのに休業等により収入が減少し、離職や廃業までには至っていないが同程度の状況にある方』へと拡大される。(申請時点の収入面での条件はあります)


 いくら支給されるのかというと、その地域の家賃扶助額。東京の特別区の2人世帯なら64,000円。原則は3カ月だが、最長9カ月まで延長される。


 マスクを2枚配るだの、30万円配るかも、といったニュースが流れて、落胆して──といった世間様。私が現在最も危機的状況にあると思うのが、非正規雇用や格安のデリヘルで働くシングルマザーだ。文字通り『家賃も払えない』状態の人と何人も、仕事で話をする。

 これを読んでいるとは到底思えないが、もし少しでも助けとなるなら、これほど嬉しい事は無い。エールを送るつもりで書く。


 大不況がやってくる。それは多分、確定された未来だ。けれども、有難い事に日本という国は、ワイドショーやSNSでバカみたいに叩かれる程に何のセーフティネットもない国では無い。無いのだ。


 少なくとも生活保護制度は健在だ。使える福祉制度を全部使っても『飢え死しました』などいう事はあり得ない。これは断言できる。

 もちろん、現在の生活を維持したい方には不十分だろう。そして加えて、個人が行政から直接お金を引き出す手段は、かなりお寒いし手間がかかる。しかし使える制度を全て使えば『シングルマザーがホームレスになりました』などという事態に至る事は考えられない。これは事実だ。


 今回のコロナ事変で収入が減少した個人に対しての救済制度ですぐに思い浮かぶのは『緊急小口資金』。窓口は社会福祉協議会で、無利子で据置期間もあるのですぐに返済せねばならないものでもないが──あくまで『融資』だ。しかも上限10万円。何の足しになるのか?

(相談や申込される場合は、社会福祉協議会に電話連絡して予約してください)

※その後、上限20万円に拡大されました(追記)。


 『総合支援資金』はもう少し上限額が大きいし、コロナ騒動で無利子となったが、それでもやはり『融資』である。


 収入がなくなっているときに『融資』を受けられるか? 私なら可能な限り借金はしない。


 一方、雇用者向けのものはそれなりのものがあると思う。

 『新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金』は、簡単に言えば『被雇用者が子供の世話のために休まねばならない時、それを有給扱いにするなら助成金を出すよ』というもの。『雇用調整助成金』も同様に雇用主が従業員を休業させたら賃金の一部を助成する。

 これらはあくまで雇用主が手続きを行うもの。雇用主がいい加減だったり、そもそも雇用されていない人は? というと、確かに寂しいものがある。


 大問題なのが仮に雇用主が精一杯制度を活用したとしても、『残業代込み』で生活を成り立たせていた人はカネが足りなくなる点だ。間違いなくジリ貧になる。してもいない残業費が助成されるわけがない。けれども、それはもう制度の不備とは違う問題だとも思う。


 『お国』は誰がどう見ても愚鈍で傲慢かもしないが、全く何もしていないというわけではない。あまりに宣伝や演出が下手で、省庁のウェブサイトはわかりにくく、手続きは煩瑣で、無意味に申請に時間がかかるから誤解されている向きもあるけれど、諸外国(どこだよ)に比べて天と地程に差があるわけではない。もしもこれで地獄なら、他国(どこだ)はどんな天国なんだと思う。


 とはいえ今回はあくまで──来月からホームレスになるかも……と怯えている人に向けて書いている。非正規雇用や格安のデリヘルで働くシングルマザーに向けて書いている。

 だから低い声でエールを送る。嘆くだけでは仕方ない。ある程度、使えるツールが日本にはある。本当に、あるのだ。

 例えば生活保護なら受理が決定した月ではなくあくまで申請した月から保護費が支給される。

4月に申請して5月に受給が決定すれば4月分から家賃扶助は支給されるのだ。だったら5月より4月に申請した方が良い。

 申請するなら福祉課(自治体によって部署名が多少異なる)へ電話で予約して行く事を勧める。いきなり行ってもかなりの時間待たされたり、待った挙句に閉所時間が到来する事もある。同じ福祉課で冒頭に書いた『住居確保給付金』も手続きできる。

 もしも間違って本当に今この瞬間ホームレスになってしまっているのなら、各自治体の福祉課へ相談してほしい。シングルマザーならシェルターを案内してもらえるだろう。そこでまず落ち着いて、福祉制度の活用を考えれば良いのだ。


 繰り返すが、現在の生活を維持したい人にとってはともかく、本当にホームレスになるかの際の人にとっては──使えるツールが日本にはある。それは無能無策にも見える現政権とは無関係に以前から存在しているのだ。

 納税の猶予措置も、限度があるが無いわけでもない。(各自治体の納税窓口で相談してください)

 使えるツールは精一杯使いましょう。


 そして周囲に『ホームレス一歩手前のシングルマザー』がいる方。私から見ると困窮している彼女たちはどうにも、行政に対してのアプローチがあまりに下手だ。行政窓口に対しての交渉力が低い。

 手助けを是非してあげてほしい。彼女のためではない。彼女が抱える子供のために。



 私は最近、コロナ事変で下落した『ブリティッシュ・アメリカン・タバコ』と『日本たばこ産業株式会社(JT)』の株式を買い増した。少なくとも今年中、株式市場は乱高下を繰り返すだろう。更にタバコ会社の株式を買い増すつもりだ。

 残念ながら貧困層はコロナ禍により拡大する。貧困層からタバコというドラッグの需要がなくなる事は有り得ない。


 私は結局、そう信じている。

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