第25話 6 days

もちろん1日だったり10日だったり15日だったり、そして月末だったりする人も沢山いるだろうが、給料日が25日な人は多いと思う。


消費者金融でも家賃保証会社でも同様に、延滞客の支払日は25日に集中しがちな傾向がある。大抵の人は仕事を一つしかしていないし、給料日が25日の人は多いから当然だ。


もちろん、年金生活者は偶数月の15日にしか払えなかったり、生活保護費を使い込んだ受給者は支給日になるが、多くの人の給料日は25日だと思う。


例外的に、月末の、イマドキ手渡しでの給与支給が多い、大阪の工場が多い自治体というエリアもあるにはあるが。



私は会社員なのだから、数字がある。

管理(回収)数字の締切日というのは、会社によって違いはあるだろうが、月末というのが多いのではないだろうか。


延滞発生額の94%は月末までに回収しておかなければならないとか、そういう、会社に設定された目標数字。



25日に支払いの約束。月末が31日なら後6日しかない。

月末が土日なら更にタイトだ。銀行振込をされると翌月扱いになってしまうのだから、月内に回収しなければならない。時間がない。



延滞発生時には大抵深くは客の延滞理由を聞かず、20日や25日での支払い約束を取得しがちだ。数が多すぎて一々深く理由を聞く時間もないし、そもそも派遣さんが対応したりもするから、自分が関知しないところで約束が取得されているからだ。


それは別にかまわない。じゃあ、全件一々詳しく事情を聞けといわれても、土台時間的に困難だからだ。



問題は25日で支払うと約束した客が、25日に電話してくる場合、または26日に当社から連絡した場合。そこから、支払えない言い訳を聞く事になる。



しかし矛盾するようだが、もはや25、26日である。時間的猶予はさほどない。そして、だからこそ、アタマに来る。


25日。

「仕事先を先月変えた。給料日が25日だと思っていたが、月末だった」

普通、給料日なんか間違えるか?



「インフルエンザに罹った。支払いにいけないので3日程待ってくれ」

大抵の場合こういう手合いは月末あたりに、本当はカネを使ってしまっていて支払えない、など言い出す。

インフルエンザが流行るシーズンなど、彼らは喜々として「インフルエンザで動けない」と主張する。

O157が流行れば「O157で寝込んでいる」、だ。


もしマールブルグ出血熱やニパウィルス感染症が日本のどこかで流行れば、絶対に彼らはそれを理由にあげるだろう。そしてただひたすら督促から逃げるだろう。

罰当たりめ。本当に、払わなくてもいいから、のたうち回って死ね、と思う事がある。



「給料日が今月から月末に変わった」

給料日当日に変更になる会社ってどんなんだ?


26日。

「兄が病気でカネ貸した」

普通、自分の家賃まで貸すか?



「取引先が金を払ってくれない」

自営業者に多い。これは嘘か本当かわからない。本当だったら仕方がないとも思う。ただ、家賃も払えない程に不安定なら、もっと安い所に引っ越せよと思う。



「親戚が病気で青森まで行かねばならなかった」

だから、普通、家賃まで使って、見舞いに行くか?



月初から督促を開始し、25日あたりまでは安易に支払いの約束を取得してしまうコチラにも非は確かにあるのだろう。しかし、数が多すぎて最初は安易にでも取得していかないと量を捌けないのだ。

一応「25日の給料で払う」と申告しても来る。全員に対して、それほど疑って話をするわけにもいかないのだ。とにかく最初は効率よく捌く必要がある。



27日。

「忙しくて支払いに行けない」

全盛期のエミネムだって支払いに行く時間くらいあるだろうよ。

そして、30代の生活保護受給者ですらこの言い訳を使う。


支払いに行けないほど忙しい生活保護受給者って、どんなんだ?



28日。

27日は家賃はもちろん、クレジットカードの引き落としが多い日である。

27日に支払えなかった人間と28日には話す。

「昨日他の支払いに引き落としされた」──或いは家賃の引き落としをされた。この理由を28日に多く聞く。


だから、延滞している分は来月25日に支払うという。

いや、問題が違う。というより、いい加減なのだろう。引き落としが発生する事くらいわかっているだろう。なぜ、むざむざ引き落としされる。わかっているだろう。


本当に、どうしてそんなに迂闊なの?──彼らの頭をノックしながら、質問したくなる。


29日。

「出張でまだ帰れない。月末までに帰る。キャッシュカードが自宅なので出張先では払えない」

アンタは毎月毎月よくも都合よく月末付近に出張しているな。毎月毎月出張しているのなら、出張先から払えるようにしろよ。



30日。

「実は先月から仕事が変わっていて今月は給料が出ない」


このあたりから本当の理由の自白を始める。文字通り今更、である。どうするのだ、今更。


払えない理由の自白。他に金使った。住民税の差し押さえを受けた。今月頭に転職しているので給料はまだ支給されない。


意外に多いのが住民税の差し押さえである。そんなに市役所は仕事してるのかと感心するが、本当なのだろうか?


月初から仕事を始めたためその月には当然給料が支給されないというのも多い。

彼らは本当に仕事を転々とする。


日雇いの仕事で結局カネが手元に残らない、雨で、雪で、台風で、仕事が少なかった。暑くて熱中症になり日雇い仕事ができなかったというのも非常に多い。


ずっと連絡が取れていて同様の理由を月初の段階から言っているならまだ良い。仕方ないとすら思う。

しかし、連絡がずっと取れずに月末前日にいきなりこんな理由を言われると──正直、頭に来る、カネがないのは仕方ないが、更に他人に迷惑までかけるのかと思う。

連絡が取れないので訪問もしているのだ。人件費だってタダではない。いや、単に疲れるのだ、行きたくないのだ。



31日。

「がんばったが借金できなかった」

連絡が継続的に取れていて、それでもできなかったのなら、たぶん本当は何もしてないと薄々はわかってはいるが、仕方ないかと思わなくもない。


他人に借りて返済しろと要求する事はイマドキたぶん、大抵の消費者金融や家賃保証会社でもしないと思う。少なくとも口に出す事はないだろう。


私の知人が働いている会社は、6万円の督促のために分娩室まで行く。そういう魔人共がいる。2019年現在で、だ。

しかし、そんな会社は稀も稀。知人ながら、いずれ逮捕されると私は思っている。



本当に頭痛がするのは、振込みました──しかし、時間に間に合いませんでした、だ。

あのね、来月付にならないようにしてくれって、何度も言ったよね、何度も、来月付にならないなら月末まで待つって言ったよね、確かに月内に着金してくれというのはコチラの都合かもしれない。会社員のノルマの問題かもしれない。だけどね、そこは、ちゃんと、やってくれよ。

「いま振込みました」──午後3時半に電話を受けながら、口では「ありがとうございました。でも来月付ですね」と回答する。

内心では有難うでも何でもない。本当に愚図、本当に、愚図。人を裏切り続けて、そんなだから現在の困窮があるのだ。アンタを誰も信用しない。本当に、他人の期待に一切応えず生きている、ただの哺乳類。



双璧をなすのは今まで全く連絡が取れなかったのにやっと月末に電話をしてくる、ならまだ良い。SMSを送ってくる、だ。

払えない理由、来月の25日に払うなどが書いてあるだけ。もう本当に、頼むから、私に出来る事なら多少の事はするから──この世から消滅してくれないか?と思う。


31日の18時も越えれば最早、私も悟りの境地である。

心穏やか。支払わないものは支払わない。支払うものは支払っているだろう。

現在の数字がどうであれ、それはそれ、もうじたばたしても仕方ない。

連絡が付けば集金にも行くが、そんな客は稀だ。



そして今日も月末が過ぎる。


毎月毎月月末はやってくる。


毎月毎月十年一日の如く同じ会話をする。



AIが仕事を奪うだって?

バカ言っちゃいけない。こんな茶番にAIなんて高尚なモノが付き合ってくれるものか。こんなバカに付き合えるのはこの宇宙で犬か人間だけだ。



AIが仕事を奪うだって?

是非そうしてくれよ。AIがこんなバカな茶番をこの世から消滅してくれるなら、是非そうしてくれよ。



AIだってこんな事、半年やれば嫌気がさすだろう。水爆弾頭を自分の担当区域に降り注がせて、延滞の原因そのものをこの世から消滅させるように行動するのではないか?──すぐやってくれ! 明日にでもやってくれ!


サンダー・ピチャイ(GoogleのCEO)、何やってんだよ!

さっさとAIを完成させてくれよ!



また今月が始まった。また月末がやってくる。


いつか、世界に、違う月末が訪れるのだろうか。私はそれを待ち望んでいる。

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