第2話 家賃保証会社って?
家賃保証会社。昨日今日出来た業界でもないのだが、一般的になったのは最近だと思う。
家賃保証会社は有り体にいえば保証人の代わり。契約者の支払能力を保証する。
仕組みはシンプル。
延滞時に契約者に変わって賃貸人へ賃料を払う。代わりに契約者から、立て替えた賃料を請求する。
原状回復費も立て替える場合もあるし、その他サービスも提供するけれど、基本はそれだ。
保険と勘違いする人もいるが、全く違う。
ただ、ここで不思議に思う方もいるかもしれない──立て替えた賃料を回収するだけなら、一体何が収益なのだ?
収益源は契約者から支払われる保証料。
そして会社によっては毎月、或いは毎年、更に保証料を頂く。
契約時の保証料は居住用物件か事業用物件かによっても違うが、前者なら1ヶ月賃料の50~80%が一般的だろうか。
契約の翌年から支払う年間保証料はこれまた居住用物件か事業用物件かによっても異なるが、前者なら毎年1万円程度が請求されると思ってもらえばそう間違った水準ではない筈だ。(年間保証料がない契約もある)
一年に一度ではなく毎月支払う場合も、一年分にすれば大体同じような金額になると思う。
不動産会社が保証会社を使うメリットは当然、賃貸借契約を結んで仲介手数料を稼ぐため。保証会社は連帯保証人よりも確実に契約者の支払能力を保証する。延滞リスクの転嫁。
加えるなら、契約時の保証料からいくらかのキックバックが入るからというのもあるだろう。
不動産屋と保証会社は一応立場は対等である。が、ちょっと考えればわかる筈だ。保証会社なんてたくさんある。自然立場は下になる事が多い。
大手の不動産業者が保証会社へ接するときの態度はちょっと、凄いものがある。
しかし中小の不動産会社だと、アタマがおかしい連中も多いが、逆に入居させたい一心で保証会社へは低頭する人もいるから、立場が上や下はやはり状況によりけりだ。
なぜ不動産会社の連中はそれ程に変な人間が多いのか?──理由は彼らの会社の社員教育の不備や離職率の高さ、労働時間の長さやノルマにあると思ってはいるが、私は不動産会社へ所属した事はない。
だからそれを論じる事はできないからやめよう。
少なくとも日本では一般的な賃貸物件は、賃借人が保証人を用意するか、保証会社を付けるか選択させられる。
とはいえ最近は保証人の有無とは無関係に保証会社との契約が必須の物件も増えている。
保証会社と契約したくない入居希望者は多い。お金がかかるから。
契約し初回の保証料を支払っても、その後に発生する年間保証料を支払いたくない人間も目立つ。
ある市役所職員が怒鳴っていた。
「俺は公務員だ。絶対安泰なんだから延滞なんかしない。保証会社なんか必要なわけないだろ! だから年間保証料は払わない」
保証会社が支払能力を保証したからこそ、入居できたのに。
かように、契約しておきながら保証料を支払わないなんて事もザラにある。
おお。納税者になんて口の利き方だよ、と思った。
大して税金も払ってないけど、酒税は結構払っているよ。
公務員の破産なんて珍しくもない。ため息が出たことを覚えている。
しかしそれくらい「保証料」というのは、納得感の無いものかもしれない。
気持ちはわからないでもないが。
ただそれでも、借主の立場・収入がどうであれ、保証会社必須の物件は増えている。それは家主・不動産会社の意向もあれば、保証会社からのキックバックがあるからという事もある。単に延滞リスクや家賃管理の面倒さを回避する意味もある。
一概にズルいと謗る事もできない。誰だって己のリスクは軽減したい。
なぜなら延滞した場合、夜逃げをした場合、死んでしまった場合、保証人が支払いや片付けをしてくれるかもわからないのだから。
あなたが家主や不動産会社だったら、いちいち遠方に住んでいる保証人へ督促する気力や労力を割けるだろうか?それも低コストで、だ。コスト0でも儲かるわけではないのだから。
ナニワ金融道でもあるまいし、できるかどうかもわからない回収のために、わざわざ遠方まででかけるなど普通できない。しない。収支は明確にマイナスだ。消費者金融だってそんな事しない。近所に支店でもあれば訪問する事くらいはあるかもしれないが。
法外な料金でも請求するなら話は別だが、そんな事できないし、普通の人はしない。したくもない。
保証人がいない人、延滞リスクの転嫁、そういうニーズと日本独特の借地借家の慣行から「家賃保証会社」というものは存在する。
これから始まるお話は、家賃保証会社の管理(回収)担当者が書くノンフィクションです。延滞客、不動産会社や、生活保護受給者を管理指導する(しない)福祉課職員、そして彼らを相手に仕事をする管理(回収)担当者のお話です。
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