CASE:The TOWER 切槍愛珠と仲良くなるために
1 プロローグ
僕と
「はあ………………」
思わずため息が出る。
僕たちの周りを、上等高校の制服を着た生徒がぐるりと囲んでいる。その数は十人。中には扇さんや六角さんまでいる。まあ、六角さんはともかく扇さんは、こういう場面なら積極的に僕を攻撃しにかかるだろうことは想像できていたから、別に不思議はないんだけど。
豪雨のために扉や窓を閉め切った体育館は蒸し暑かった。雨の湿気をじっとりと含んだ制服が重たく感じる。
輪の外を見る。笹原は首にひっかけたヘッドフォンをしきりに両手でもてあそびながら、おどおどした目でこちらを見ている。隣に立っている帳は腕を組んで、この湿度の高い空間において一人だけ涼やかだった。
さらに帳の隣には、二人の見慣れない女性の姿。一人は警察官だと言うけれど、その巨躯に茶色の長髪、さらに肩へ適当に引っかけたジャケットは、コンビニでくだを巻いているバイカーと見た方が適切な気さえした。もう一人は白衣を身にまとっていて、あらかじめ紹介された通りカウンセラーだという言葉を鵜呑みにしても問題なさそうな人だった。二人とも僕たちに加勢してくれる気はないらしく、興味と不安とをないまぜにした表情でこっちを見ている。
「じゃあ、準備はいいな?」
輪から外れた女性陣から、さらに少し遠ざかったところで雪垣が声を出す。
「俺の言った通りやってくれれば必ず勝てる。じゃあ、構えて」
雪垣の言葉を合図に、僕たちを囲む十人が一斉に構えた。彼らが手に持っているのは、色とりどりのゴムボール。サイズはすべて同じで、バレーボールくらい。
「ふわあーぁ」
僕の後ろで愛珠があくびをする。
「おい妹、頼むからやる気出してくれ」
「あいあい弟。万事万端心得た」
「その割にはやる気が感じられないんだよなあ。こんな絶望的な状況で」
「絶望的なんて今に始まったことじゃないからね」
勝負のルールは簡単。
彼らが手にした10個のボール。そのすべてに、僕が当たらなければ勝ち。
「でもやる気出せってのはこっちのセリフ。あなたの作戦、本当にあのいけ好かない野郎の手の内読めてるんだよね?」
「任せとけ。このゲームの合理的必勝法はひとつしかない」
「おーきーどーきー。じゃあ、一泡吹かせますか」
じろりと、愛珠は雪垣をねめつけてから、意地悪く笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます