あした星が落ちると聞いたから

オーロラソース

第1話 あした星が落ちると聞いたから

 あした星が落ちると聞いたから、監視の目をかいくぐり私は屋敷を飛び出した。


 絶望をもたらすその報せは、臆病な私に駆け出す勇気をくれた。

 私は走る、疾風のように、星が落ちるその前に彼の元へと急ぐのだ。走る車も見知らぬ人も、今の私は怖くない。

 すべてはあした終わるのだ。見上げることしか出来なかった鉄の扉も今ならきっと飛び越えられる。あした星が落ちるから、今日の私は特別なのだ。


 彼の住まう屋敷の庭から私は叫ぶ。想いよ、彼に届けと。


 姿を現した彼は少し驚きながらも静かに体を寄せてきた。

 星が落ちるその前に私の想いは成ったのだ。

 胸元の鈴を鳴らして「意外に大胆なのだな」と彼が言う。


 あした、星が落ちると聞いたのだ、形振なりふり構っていられない。そう答えた私に、「ああ、なるほど」と彼は頷きこう言った。


 今日はエイプリルフール、人間が嘘を許す日だ。


 どうやら世界は、あした以降もつづくらしい。


 いつもと変わらぬ星空に、羞恥と喜びの声が「ニャー」と響いた。




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