ヴィーンでの勉強と苦難の日々2

 この頃の私は二つの危機にさらされていた。私の以前、その危機の名前を知らなかったし、ドイツ民族に対する恐ろしい意味も理解していなかった。いわゆる、マルクシズムとユダヤ主義である。


 ヴィーン、多くの人々に悪意のない楽園の縮図と考えられ、遊び人には華やかな場所であると知られているこの都市が、私には自分の生涯の一番あわれな時代をまざまざと思い出させたのだった。


 今日でもなお、この都市は私に悲しい思いを起こさせる。私はこの五年間の貧困と悲惨な時を過ごしたのだ。


 この五年間、私はそこでまず補助労働者となり、画工となり、パンを稼がねばならなかった。日々の空腹を抑えるのも十分でない、ほんのわずかなパンを、である。


 空腹は当時、私の忠実な用心棒であった。それは一時も私から離れない一人であり、すべてにおいて私と分かち合う間柄でもあった。


 本を買うたびに空腹が私を襲った。オペラに行けば数日は空腹が私の相手をした。この無情な友との戦いは日々続いたのだ。


 しかし、私はこの時代にかつてないほどに勉強した。建築学と、食事を節約してたまに行くオペラを除けば、本だけが唯一の友人だった。


 当時の私は貪るように本を読んだ。仕事の合間に勉強もした。それよよって、私は数年で今日の知識の基礎を作ることができたのだ。


 しかし、それだけではなかった。この頃に私の世界観は形成された。それが私の行動の指針となった。


 かつて私が作り上げた世界には、これ以上のものはなく、変えるべきものはないと思っていた。


 逆であった。


 私は創造的な思想というのは、若いころの出来事が基礎を作ると思った。


 青年の独創性は建築材料として未来の計画を供給し、そこから賢明な大人が石を取り出し、切り、そして建物を建てるのである。それは大人の英知が青年の独創性をつぶさないためのものだった。

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