ヴィーンでの勉強と苦難の日々3

 私が父の家で過ごしていたときの生活は、他の人たちの生活とまったく変わらなかった。私は日々を不安なく過ごしていたし、社会問題など考えもしなかった。


 私の子供のときの環境は小市民のものであり、職人とはほとんど関係のない世界からなっていた。というのも、一見して奇異に感じられるかもしれないが、小市民と職人との間にある溝は想像以上に深いのである。


 この原因は、つい最近職人から脱出した社会グループというものは、再び職人の地位に落ちはしないか、もしくは同じように職人に見られないかと、常に恐れているからである。


 さらには、その下層階級の文化的な貧しさ、粗さが思い出され、自分の地位の低さにより、文化的生産階級と接触することが耐えがたい重荷となるのである。


 成り上がりの上級階級のものが、最下級の人間にむやみに近づくこともある。何しろ、成り上がりものというのは、自分の努力だけで社会的地位を高めるために戦ってきたのだから。


 しかし、この非常に厳しい闘争が、ついに同情心を失わせてしまう。苦しい生存競争が、残されていたはずの悲しみという感情を押し殺してしまうのである。

 運命はこの点において、私に親切だった。


 運命はかつて父が抜け出してきた貧困と不安の世界に私を戻し、下層社会の教育の目隠しを取り除いてくれたのである。


 今や私は人というものを知り、外見と内部の本質を見分けることができるようになった。

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