第6話

 ところで、傍観者になれない人生にも、一方に、これまで述べてきた形とは別の形がある。

仮に、ある乳製品会社が起こした砒素入りミルク事件や、水俣事件、四日市の公害事件、その他いろいろと大企業が起こしてきた。

 これらの大企業の指導者は、己の会社が起こした事件を想起してもらいたい。傍観できるはずがない。

 しかし現実に彼らがなし得た仕事といえば、自らの企業をどのように守るか、いかに保障を上手に隠蔽するかに全力を集中していただけである。

 福島の原発でもそうである。


今日、大企業の中軸にいる男達の原型はほとんどこのような人種である。

これもやはりマキャベリズムの単なる技術的な問題に過ぎないのだろうか、という質問を発したら、彼らの答えは常に同じ形をとる。

すなわち、漠然としているから問題は成立しない、と。しかし、彼らは不明確な状況を構成する要素を調べて、決まってそれを明確には発表しない。

私が先に述べたマキャベリズムは何も政治の世界に限ったことではない。

 こう視てくると、企業は利潤だけを追い、いつも傍観者である、と断じても差し支えないと思う。

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傍観者になれない人生 @kounosu01111

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