第30話 破格!
「ダブル契約⁉︎」
「はい、そうです」
午後からT-factoryと面談し、その足で夕方にはKPIの社長と面談した。
結果を根元さんに電話した。
「ロックちゃん。つまり両社と同時に契約するってこと?」
「そうです。今後、レコーディングやツアーなんかの度に条件の良い方と組むというやり方になります」
「信じられない」
「それと、活動拠点は Gun & Me にするっていう条件も両社に呑ませました」
「ええっ⁉︎」
「だからわたしは今就職活動してる地元企業のどこかに勤めながらバンド活動させてもらいます。チャイは日舞やりながら、加瀬ちゃんは両親のリハビリ介護やりながら、セナは社会復帰活動やりながら、ネマロはまあ、復学活動とDJやりながら」
「こういうのを本当の意味での『破格』って言うのね」
「でも、当然のことのような気もします。だって、ロック聴く人たちって特別な人たちじゃないですもん。日常に悪戦苦闘するサラリーマンだったり、介護で疲れ果ててる主婦の方たちだったり。わたしたち自身がそういう生活からかけ離れていい音楽作れるわけないですもん」
「確かにそうね」
「理想は高いですよ。ロック界のベートーヴェン目指します」
「え」
「ベートーヴェンは選民みたいに音楽だけに努力してたんじゃないはずです。あの苦悩に満ちた人生そのものが万人の人生に通ずる努力なんですよ」
「時代は変わるのね」
「根元さん。企業が自分たちのリスクを他者に押し付ける時代は終わりました。最初っから売れるって保障のあるバンドと自分たちにだけ有利な契約するなんて、精神がロックじゃないでしょ」
「ふ、ふふふ・・・ロックちゃん。あなたを敵に回すと怖そうね」
「この間言ったじゃないですか。根元さんが真摯な経営者であり続ける限り、わたしはあなたと組みますよ」
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