第2話 闘う少女
クイーンのお陰でロックで生きていく決心をしたわたしは、中学に入るや否や、決定的な出会いをする。
エレファントカシマシ、という日本のロックバンドだ。
はっきりいって、わたしよりもかなり上の世代のバンドだ。
最初に聴いたのが、『花男』という、クソッタレのようにかっこいい曲だった。
その直後に、『ファイティングマン』を聴いた。
もう、これしかない、と思った。
わたしは迷わず軽音楽部に入部し、ギターの練習に明け暮れた。
活動のメインは文化祭での演奏。
その日のために部員を割り振ってバンドを組んだ。
わたしのグループは、男子は3人、女子はわたし1人の4ピースバンド。強引にギター・ヴォーカルの座を奪った。
3年生の時の文化祭。中学最後の演奏だ。
打合せではバンプの曲2曲とオレンジの1曲で締める予定だった。けれども、わたしは他の3人のメンバーをほとんど脅すようにして、ラストの曲をセットリストとは別の曲にこっそり変更した。
最後の曲。バンプを待っている観客が、突如激しく打ち鳴らされるドラムにざわつき始める。ギターがパンキーなリフを高速で奏で始めた。ベースが唸る。
そして、わたしは、怒鳴った。
エレファントカシマシの、『奴隷天国』。
女のわたしが、この激しすぎる歌を、観客に叩きつけるように怒鳴り散らす。
一年生の女子の中には泣き出す子までいた。
ギターの男子がビビって演奏を中断しようとした。わたしは彼の前にあるコーラス用のマイクスタンドを蹴り倒し、自分のマイクを通して彼に怒鳴る。
「やめてどうすんだよ、根性なしが‼︎」
文化祭を滅茶苦茶にしたせいか、内申書は散々なことを書かれた。
のみならず、進路指導の際は、軽音楽部のない高校にしか行かせない、と訳のわからないことを学年主任の中年男性教師がのたまった。
「男は、クズだ」
小学校の時のいじめもあって、わたしはこう結論づけた。
そして、軽音楽部のない『スカジョ』に入学した。
こういう経緯があったので、わたしはスカジョに入ってからすぐにバンド結成に動くことはできなかった。
律儀に中学教師からの引き継ぎ事項を遵守する、『森っシー』こと、森末生活指導担当教諭が何かにつけてわたしを目の敵にする。
2年生の時、隣県のライブハウスで活動しているという有望な一年の子が入ってきたので、一緒にバンドやろうと誘ったら、裏から手を回されて、その子自身がライブハウスの出入り禁止という憂き目にあった。職員室に怒鳴り込んで森っシーの机を蹴り飛ばしたら、わたしはなんと自主退学勧告を受けた。
さすがに行き過ぎだろうと校長がことを納めてくれたけれども、この幾多もの障害を乗り越えない限り明日はない。
だから、わたしは発想を180度転換することにしたのだった。
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