第12話 過去を告げる
「えー!先生に会ったの?吃驚したでしょ」
「うん」
「同じ学校にずっと居るの?」
「いや、他の学校から最近戻って来たらしい」
「へ~何か縁があるんだろうね」
数日後、私と双葉さんは、少し離れたカフェに来ていた。
しかし、此処も双葉さんの顔見知りらしく、次々スイーツが運ばれて来ていた。
「学生時代どんな感じだったの?」
「…」
「ん?ああ、話したくないなら話さなくていいからね」
今まで誰にも言った事は無いし、言うつもりは無かった。
けれど、双葉さんなら…と、気持ちが揺らぐ。
失礼だけど、笑顔は不気味だし変わった人だと思っていた。
けど、今ではこうして一緒に色んな場所に行って、話を聞いて。
まだ会ってから、それ程経っていないけれど、双葉さんは大切な人だから。
私の事を、もっと知ってほしいと思う。けど。
「…何処から何処まで話せばいいかなって」
「うーん…私は聞きたいけどねー。ちっちゃい頃の事から全部。今日は1日オフだし聞く時間は、たっぷりあるよ」
「…そっか。うん、話す。全部」
少し考えた私は、そう決心した。
引かれるかもしれない。
けれど、双葉さんなら、全て知っても変わらずに接してくれる。そんな期待を抱いていた。
「店員さーん」
双葉さんは、店員を呼ぶと、暫く入って来ないように告げた。
ドアを閉め、完全個室状態になった部屋で私は少しずつ、今までの話をした。
双葉さんは、笑顔は崩さないものの、時々相槌を挟みながら、真剣に聞いてくれた。
「話してくれて、ありがとう。私の話も聞く?」
「…うん、聞きたい」
思った以上に、双葉さんはサッパリしていた。
特に言及するつもりも無いらしい。
その方が私も、気が楽だった。
本当にこの人は、不思議な人だ。
私は、氷が解けて薄くなった珈琲を飲みながら、双葉さんの話に耳を傾けた。
梢の子守唄 春 @haruemo
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