chapter02 基本的な敬語~謙譲語~

 ある日の部活にて…


「部長!若林先生が呼んでいるので、隣の準備室まで下さい」


「分かった!今行くよ」


「部長に、頂きたいものがあるそうです」


「りょーかい!!」


「…」


「どうしたの?お姉…」


 部活では、いつも隣に座って練習をする美琴が、私の顔を見て訊ねてくる。


「う~ん、ちょっとね…」


”スタスタスタスタ…”


「ちょっと、いいかしら?」


 私は、煉先輩に若林先生からの言伝をした後輩部員の前まで行き、話しかけた。


「副部長!何でしょうか?」


「さっきの部長への敬語の使い方だけど、間違っていたわよ!」


「えっ!?」


「あなたが言っていた「」も「」も、よ」


「正しくは「隣の準備室までください」「頂きたいものがあるそうです」になるわ!」


「私たち2年生に間違えるのならまだ許せるけど、3年生の先輩に間違った敬語表現を使ってはダメだわ!今後は気を付けてね」


「すいませんでした…以後、気を付けます」


「よろしくね!!」


”スタスタスタスタ…”


「あの子は確か…私の隣のクラスか…んで、この前部活の追加募集で入ったばっかりだったっけ…」


「そうね。足達先生のこの前の授業で、たまたま敬語についてやっていたから、ちょっと気になっちゃって、ね…」



***



 真琴さんが後輩部員に言っていたように、自分の動作を謙って表現することで、結果的に相手を敬う形とする敬語表現のことを「謙譲語」と言います。


 謙譲語には「宅配便でお送りいたします」「会議室までご案内いたします」のような…



お(ご)~する(いたす)型


や、「よろしくお願い申し上げます」「ご連絡申し上げます」のような…


お(ご)~申し上げる型


と、動詞を謙譲表現にするパターンがあります。例えば…


言う  → 申す

見る  → 拝見する

聞く  → 承る、伺う

食べる → いただく

もらう → いただく・ちょうだいする

行く  → 参る・伺う

来る  → 参る


等があり、これらは全てとなります。


 相手の動作を敬って言い表す際は、chapter1で紹介した「尊敬語」を用いた敬語表現を行う必要があります。


 この「尊敬語」と「謙譲語」ですが、


 ましてや、相手の顔色やしぐさを見ることのできない「ビジネス電話」の世界においては、尊敬語や謙譲語の使い分けは、大変重要であると言えます。



***



「という訳で、美琴にも今後は、やっぱり敬語表現を使ってもらわなきゃだめね!!」


「え゛え゛~それはちょっと勘弁かなぁ…姉妹なんだし!!」


「そんなこと言って!!煉先輩の前で失敗しても知らないわよ…」


「ん!俺がどうしたって!?」


「いっ、いえ…何でもありません。」


「何でもないです!先輩!部活を始めましょう!!」


「???」



chapter3 に続く…




~検定問題にチャレンジ!~


 次は証券会社勤務の今田美咲が電話でお客さまに言ったことである。中から言葉遣いが「不適当」と思われるものを一つ選びなさい。

(第20回ビジネス電話実務検定知識B級より)



「1.「ただ今、ホームページのリニューアルを検討しております」」



「2.「ご不明な点は、十分にご説明したいとご存じいたしております」」



「3.「お客さまの大切な資産をお預かりする責任を痛感しております」」



「4.「個人情報の取り扱いに一層注意してまいりたいと思っております」」



「不適当」な選択肢は…



























「2.「ご不明な点は、十分にご説明したいとご存じいたしております」」



~解説~



 「ご存じ」は尊敬語の一つで、話の相手などが「知っている」という意味で使う言葉です。「ご存じ」の後ろに謙譲表現の「いたしております」を付けても、自分のことには使用することができません。この場合は、自分が「思う」訳ですから、「(十分にご説明したいと)存じます」などが適切な表現となります。

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