chapter18 実務技能-社交業務-(サービス接遇編 最終回)
ある日曜日の朝の嶋尻家。
「母さん!祝儀袋は用意できてるか?」
「あなた。この通りできていますよ!」
「お父さん、お母さん、おはよう!…随分早くから支度をしているみたいだけど、今日何かあるの?」
「真琴、おはよう。お父さんの会社の部下の方が本社に栄転が決まって、会社でパーティーをするらしいのよ!」
「そうなんだ。それで、急いで出かける準備をしているという訳さ。」
「って、もうこんな時間か!母さん、行ってくるよ!」
「いってらっしゃい。急ぎすぎて、ケガとかしないでくださいね!」
「ああ、分かった!」
”ギィ…バタン”
「何だかお父さん、嬉しそうだったね!」
「入社した時から世話を焼いている社員さんの栄転だからね~。「まるで、息子が本社勤務になったみたいだ~」って言ってたわ!」
「なるほどね…」
「ところで、さっきお父さんが持って行った祝儀袋だけど、この前学校の授業で習ったんだ~」
「お祝い事なのか、お悔やみ事なのかで、使う袋が違うんだよね!」
「あら!私が高校時代の時なんか、そんな知識持っていなかったって言うのに…あなたと美琴を「けやき商」に入学させて、本当に良かったと思うわ!」
「さっきお父さんが持って行ったのは「蝶結びの祝儀袋」で、何回あっても良いようなお祝いの時に使う袋だよね!」
「そうね!」
「私も、一回友人の結婚式に蝶結びの祝儀袋を持って行ってしまい、恥をかいたことがあったわ…」
***
お祝い事に呼ばれた際に、祝儀袋を使ってお金を包み、先方に渡すことがあります。
この際、注意しなければならないのは、祝儀袋にも「蝶結び」と「結び切り」の2種類のものが存在するということです。
蝶結びの祝儀袋は、昇進祝いや開業祝いなど、何回あっても良い祝い事の際に使用し、結び切り(紐の先端が上を向いているもの)の祝儀袋は、何回もあっては困る祝い事(結婚等)の時に使用されます。
近年では、販売されている祝儀袋の裏面に、使用できるシーンが記載されていることが多くなってきました。
祝儀袋を購入する際は、レジに向かう前に、裏面に記載された「使用できるシーン」を必ず確認しておく必要があるでしょう。
***
「お葬式の時に持っていく「不祝儀袋」には種類はないけど、そこに書く「上書き」には、注意が必要だって、足達先生が言ってた!」
「仏教のお葬式には「御香典」や「御香料」、神式のお葬式には「御榊料」や「御玉串料」、キリスト教式のお葬式には「御花料」ね」
「万が一、相手の宗教が分からない場合は「御霊前」でもいいんだよね!」
「その通り。私は、大概「御霊前」の不祝儀袋を買ってきちゃうわね…」
***
使用する袋の次に大事なのが「上書き」です。
真琴さんのお母さんが言っていた「お葬式」以外での一例を挙げると…
新築 → 御新築祝
病気見舞い → 御見舞
病気見舞いのお返し → 快気祝
多忙なスタッフへの見舞 → 陣中御見舞
神官・教会へのお礼 → 御礼
僧侶へのお礼 → 御布施
世話になった人へのお礼 → 御礼・謝礼・粗品・(相手が目下の場合のみ)寸志
等がありますが、祝い事であれば…
「御祝」が全般的に使用することが可能!
な為、判断に迷った場合に使用すると良いでしょう。
サービス接遇検定3級では、祝儀袋の種類と、上書きの種類について問われるケースが目立ちますので、慶弔に関する参考書や、サービス接遇検定受験ガイドに記載されている資料を参考に、重要な点をおさえておくと良いでしょう。
***
「それにしても、もう真琴とこんな話ができてしまうのね…」
「私とお父さんが真琴の結婚式に参列して、祝儀袋を持っていくのも、時間の問題かしら、ね…」
「お母さん!私、まだ高校生だよ!!結婚なんて、まだまだ先の話だって!」
「そんなこと言ってると、あっという間にあなたのウェディングドレス姿を見ることになるのよ、きっと…」
「それは、私より美琴の方が先になるわね、きっと…」
「???」
afterword(あとがき) に続く
-検定問題にチャレンジ!-
文具売り場スタッフの吉田裕子はお客さまから、慶事・弔事に現金を贈るときどのような上書きがよいかと尋ねられることがある。次は吉田がその答えとして考えた慶事・弔事の種類と上書きの組み合わせである。中から「不適当」と思われるものを一つ選びなさい。
(第36回 サービス接遇実務検定3級問題より)
「1.長寿のお祝い = 寿」
「2.結婚祝い = 御祝」
「3.葬儀(仏式) = 御香典」
「4.僧侶へのお礼 = 御布施」
「5.葬儀(キリスト教式) = 御榊料」
「不適当」な組み合わせは…
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「5.葬儀(キリスト教式) = 御榊料」
-解説-
キリスト教式の葬儀の場合の上書きは「御花料」(葬儀の際に「献花」を行うことに由来。仏教は「焼香」を行うため「御香典」となる)と記入するのがマナーです。「御榊料」は神式の時の上書き(神式では、葬儀の際「玉串奉奠(たまぐしほうてん。榊の枝に紙垂(しで)と呼ばれる白い紙をつけた「玉串」を、死者を悼む心と共に、神に捧げる儀式)」を行うことに由来。「御玉串料」と記入することもある)であるため、組み合わせとして「不適当」ということになります。
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