chapter04 専門知識-従業知識-

「…それにしても、すごい渋滞だったな…」


「…今日はだから、仕方ないですよ…」


「それ以上に、昼に入った、あの有名蕎麦屋のの店は、も甚だしい…」


に入ったのにも関わらず、いましたし、そんな状況であるにも関わらずって感じでしたから、のも時間の問題じゃないでしょうか?」


 この2人は、小笠先生と足達先生。

 2人はけやき商の生徒会顧問で、小笠先生は理科を、足達先生は商業を担当し、私が選択している「秘書・接遇」の担当の先生だ。


「小笠先生に足達先生!こんにちは!!」


「あぁ、嶋尻さん!」


「何だか、先生の「秘書・接遇」の授業で教えて頂いている言葉が沢山聞こえてきましたけど…」


「いやな、生徒会の用事でさっきまで足達先生と外に出ていたんだ。途中、昼食の時間帯になったから、有名な蕎麦屋の暖簾分けの店に入ったんだが…」


「見掛け倒しだった?ということですか?」


「そうなのよ。しかも、五十日で道も込んでいたから、帰りも遅くなっちゃって…」


「ごとうび?のれんわけ?」


「そうか…まだ授業では教えていなかったわね…」


「暖簾分けというのは、長年勤務した店から屋号、これは店の名前のことだが、これを分けてもらって独立することを言うんだ。」


暖簾のれんって、お店の入口にかかっているあれですよね?」


「そうね。市内に同じ名前の蕎麦屋が何軒もあるのは知っているでしょ?」


「はい。でもあれって、チェーン店とかじゃないんですか?」


「チェーン店っていうのは、大資本を元手にブランド、経営方針、サービスの内容、外観などに統一性を持たせ、多数の店舗の運営や管理を行う経営形態のことを言うわ。」


「一方、暖簾分けをしてもらった店というのは、通常、チェーン店のような経営形態を取っていないの。各店が独立採算で経営を行うのが通常ね。」


「暖簾分けのメリットは、有名なお店の名前や、そこで修行して身につけた技や味を、自分の店で使えることね。」


「なるほど!あと、五十日ごとうびというのは?」


「五十日というのは、五の倍数の日のことで、給料日等さまざまな支払日となっていることが多いことから、のことだ。」


「それだけ「人手」が多くなるという訳ですね。」


「そういうことね!!」


「先生、他にも「看板倒れ」とか「書き入れ時」「閑古鳥が鳴く」「一見の客」「暖簾を下ろす」とかおっしゃっていたような気がしますが…」


「「看板倒れ」というのは、見掛けは立派なのに、中身がそれに伴わないことを言う。暖簾分けの店なのに、味はたいしたことなかったものでな…」


「「書き入れ時」というのは、商売が繁盛している時のことを言うわ。そして「閑古鳥が鳴く」というのは、客が居なくて暇な様子のことを言うわ。」


「私たちがその蕎麦屋に立ち寄ったのは、ちょうどお昼位だったの。混雑していて可笑しくない時間帯だったのに、その店は空いていた、という訳ね。」


「「一見(いちげん)の客」というのは、馴染みでなく初めての客のこと。そして「暖簾を下ろす」というのは、商売をやめるという意味で使われる。」


「忙しいはずの時間帯に暇な店が、初めての客を大切にしない雰囲気だったから、そのうち倒産してしまうだろう、ということだ。」


「「秘書・接遇」の授業でも教えるのだけど、サービスの現場で使われる商業用語は、これだけじゃないの。

例えば…


「上客」→上得意(常連客よりも多く店に来店する)のお客様のこと。

「仲見世」→神社やお寺の境内にある商店街

「夏枯れ」→夏に客足が減り商売不振になること

「老舗」→代々同じ商売を続けている店

「元祖」→最初に作って売り出した品や創業者

「二八」→商売がうまくいかないとされる2月・8月のこと

「左向き(左前)」→商売などがうまくいかなくなること

「口銭(コミッション)」→売買の仲介手数料

「大枚(たいまい)」→多額のお金

「紛い物(まがいもの)」→本物に似せて作った品物

「リベート(割戻金)」→代金の一部を手数料として支払人に戻すこと

「プレミアム」→割増金、または商品につける景品など。

「ニーズ」→需要

「マージン」→売値から原価を差し引いた利益

「ブランド」→商標・銘柄(特に一流商品の名称)

「アフターサービス」→商品を売った後も、修理などの便宜を図ること


などなど…」


「随分ありますね…」


「これらは、サービス業界で使われる用語の、ほんの一部に過ぎないわ。」


「今後の「秘書・接遇」の授業で他の言葉についても紹介していくから、一緒に勉強していきましょうね!」


「足達先生!よろしくお願いします!!」


chapter 5 に続く



-検定問題にチャレンジ!!-


 次は用語とその意味の組み合わせである。中から「不適当」と思われるものを一つ選びなさい。

(第35回 サービス接遇実務検定3級より)


「1.量り売り

買う人の欲しい量だけ量って売ること。」


「2.投げ売り

在庫整理のため損を覚悟で安く売ること。」


「3.競り売り

売り切るために店が競争して安く売ること。」


「4.卸売り

製造業者から品物を仕入れて小売店に売ること。」


「5.たたき売り

威勢よく台をたたいて少しずつ値引きして売ること。」



「不適当」なものは…















「3.競り売り

売り切るために店が競争して安く売ること。」


-解説-


「「競り売り」というのは、買い手に競争で値を付けさせ、一番高い値を付けた者に商品を売ることを言います。近年、利用が一般化した「ネットオークション」も「競り売り」の一種であると言えるでしょう。」

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