chapter05 一般知識-社会常識-

「はいっ。それじゃ今日はこの中でサービス業でアルバイトをしている生徒に、バイト中の失敗談を語ってもらいます。」


「は~い!それじゃ私から。」


「それじゃあなたから。あなたはどこでアルバイトをしているの?」


「私は有名なコンビニでアルバイトをしています。バイトを始めてもう1年になるんですけど、入りたてのとき、お婆さんが可愛い洋服を着たお孫さんを連れて来たんです。」


「それで!?」


「あまりにそのお孫さんとその洋服が可愛かったので…」


「「ですね!!」」


「って言ったんです。」


「そうしたら、そのお婆さんは「なんて失礼な人だこと!!」って言って、お店を出て行っちゃったんです…」


「私はお婆さんを怒らせてしまったみたいで、未だにそのお婆さんを怒らせてしまった理由が分からないんです…」


「ことわざをよく知らないで使ったのが仇になったわね…」


「さて、なぜお婆さんは怒って出ていったしまったのか…分かる人~?」


「はいっ!」


「それじゃ嶋尻さん!」


「「まごにも衣装」の「まご」は、お孫さんの「まご」ではなく、馬の子ども、つまり「馬子」を意味しているからです!!」


「う~ん、惜しいなぁ…」


「あれっ!?違いました?」


「「馬子」というのは、馬をひいて人や荷物を運ぶことを職業とした人のことを指すの。」


「「職業の貴賤きせんなし(職業に貴いとか卑しいとかはない)」とは言うけど、「馬子」をしているようなとして「馬子にも衣装」は使われるわ。」


「そのお婆さんは「うちの孫がつまらない者だとでも言いたいわけ!?」って思ったのね。」


「そういうことだったんですね…次から気をつけます…」



***



 このように、ことわざを「勘違い」して使うと、お客様から顰蹙ひんしゅくを買うことがあります。


 サービススタッフが知っておきたいことわざには、他にも次のようなものがあります。


「浮世は衣装七分」

世間は中身よりも外見で判断するものだという例え。


「餅は餅屋」

専門的なことは専門家が行うのが一番良いという例え。


「物も言いようで角が立つ」

言い方によっては、相手に不愉快な思いをさせたりするので、言葉遣いには十分気をつけなさいということ。


「魚心あれば水心」

好意を持って接すれば、相手も好意を持って迎えてくれることの例え。


「気が利いて間が抜ける」

何かと気を回し過ぎると、かえって大切なところに手落ちが出ること。


「目は口ほどに物を言う」

うまく言い繕っても目には本音が現れてしまうこと。


「損して得取れ」

目先のことに囚われずに、将来のことを考えて商売をしなさいという例え。


 これ以外にも、サービススタッフが知るべきことわざは山ほどあります。興味がお有の方は、ことわざ辞典や、サービス接遇検定の受験ガイド、過去問題などをご覧下さい。



***



「さて、他には何かないかしら?」


「それじゃ次は私。私は今レストランのキッチンでアルバイトをしています。ある日、ホールが忙しくて、私はキッチンで料理をしながらホールにも出ていたんですけど、お客様から「『』を頂けるかしら?」って言われて「???」ってなったんです…」


「でも、その後お客様はテーブルを見渡した後すぐに「やっぱりいいわ。ありがとう」とおっしゃって…その日は店長もいなくて、一緒に働いていたアルバイトの人達も「波の花」が何なのか分からなかったので…結局今でも「波の花」が何なのか、分からないんです…」


「随分と、そのお客様も遠まわしな言い方をしたものね…」


「さて「波の花」が何なのか、分かる人はいるかな?」


「(きっと、お客様があの子を呼んでおいて「やっぱりいいわ」と言ったのは、テーブルを見渡した時にそれがあったからだわ。)」


「(「波」は普通「海」で起こるもの。故に海で作られるもの、ということね。それでいて、テーブルの上にあるものと言えば…)」


「さぁ、分かる人はいないのか?」


「はいっ!」


「それは「お塩」のことじゃないでしょうか!!」


「嶋尻さん、正解!!」


「やった!!」


「「波の花」というのは、お塩の伝統的な言い方のことよ。」


「これ以外にも「お手元=お箸」「上がり=お茶」「お愛想=お勘定」「紫(むらさき)=しょうゆ」などの言い方があるわね。」


「飲食店に勤めているなら、出くわすことが多い言葉たちのはずだから、覚えおくと良いわね!」


「はい!分かりました!!」



***



 このように、伝統的な言い回し方は、他にもあります。

 例えば、物の数え方では…


もち菓子やケーキ → 個

まんじゅう → 個・団(だん)

ようかん → 本・棹(さお)

ビスケットやクッキー → 枚

葡萄 → 房

西瓜・南瓜 → 玉

烏賊(イカ)や蟹 → 杯(はい)

鯛や平目 → 枚

蛤(はまぐり) → 枚・個

タンス → 棹

本棚 → 架(か)


 等、特異な言い回しをするものもあります。

 また、菓子の種類にも…


もち菓子 → 大福・草もち・柏餅など

水菓子 → 果物

練り菓子 → ようかんやういろうなど

蒸し菓子 → まんじゅう・蒸しようかんなど

氷菓子 → アイス・シャーベットなど

干菓子 → らくがん・こんぺいとうなど

生菓子 → もち菓子や蒸し菓子など

洋菓子 → ケーキやチョコレートなど


などがあり、とくに果物のことを普段から「水菓子」と呼ぶ人は少ないと思います。



***



「はい!それじゃ今日はここまでにしましょう!バイトでの経験を話してくれた2人と、発言をしてくれた嶋尻さん、ありがとう!!」


「今日の授業では紹介できなかったけど「足が早い(食べ物が腐りやすいという意味)」や「あごを出す(くたびれているという意味)」などといった慣用的に使われている言い回しもあるので、テキストをよく見返しておくように!!」


 サービス業界で使われている「慣用的な言い回し」は星の数ほどあります。

 詳しくは、検定問題や受験ガイド等で学習して下さい。



chapter6 に続く



-検定問題にチャレンジ!!-


 次は用語とその組み合わせである。中から「不適当」と思われるものを1つ選びなさい。

(第35回 サービス接遇実務検定3級より)


「1.水菓子

果物の別の言い方」


「2.洋菓子

ケーキなどの西洋風の菓子のこと」


「3.蒸し菓子

饅頭などの蒸して作った菓子のこと」


「4.干菓子

干し柿などの干した果物の菓子のこと」


「5.餅菓子

大福などの、餅や葛を原料にした菓子のこと」



「不適当」なものは…















「4.干菓子

干し柿などの干した果物の菓子のこと」



-解説-



「干菓子とは、保存がきくように水分を少なめにして作った和菓子のことで、落雁(きな粉や麦粉などに砂糖と飴を混ぜて固め、型に入れて押し出したもの)や金平糖のことを指します。「乾菓子」とも書き、ドライフルーツのことではありませんので、不適当ということになります。」

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