第一宣言 チームVX

あたたかい。

 なくしていた母の温もりのように、失っていた友愛のように。

 包まれている。

 

「ん......?」

引っ張られるように意識が浮上する。


「いでっ痛っいつっ!!」

「あっ起きた!」

「起きたぁ!?」

「起きました!」

 意識が浮上すると共に、腕やあばらで痛みが暴れ出す。

「おとなしくしててください、まだ安静にしないと......」

 もう一度意識が飛びそうな中、聞こえた声に頷いてなんとか痛みをこらえる。

「よかった。もう少し治療したらあとは安静にしてくださいね」

はい。と答えようにも、体は疲れきって声を出せない。

「無理しないでいいよ、今は黙って休みな」

 と、大人しそうな青年の言葉に甘えて口を閉じる。

「今、君の治療をしてる彼女は牧原まきって言うんだけど......」

「牧原です、挨拶は結構ですので、ゆっくり休んでください」

 此方に聖母のような笑顔を向けながら少女は能力を行使する。

 そう、能力だ。

「なんで......俺みたいなの助けたんですか」

 さっきはでてこなかった声が溢れ出す。

「俺は無能力者だ、能力をもってるなら、そう言うのわかるんでしょ?」

 共感能力。

能力を持つ人々は、目に写る人間が能力を持つか持たないかを理解できるらしい......僕は能力なんてないからそう言うのはわからないのだけど。

「能力を持っていても、案外わからない人とかいますよ?」

「......は?」

「このひと......前門さんも他人から見たら能力を持ってるか分かりにくいですし」

 と、少女は隣に座る青年をじっと見つめる。


「まあよく見れば何か隠してるってわかるんですけど......まだ教えてくれないんですか?」


「んー、僕もよくわかんないからねぇ、単に能力の関係でそう見えるだけじゃない?」

「その......前門さんの能力って......」

 あのとき僕を引っ張った能力、念力系か何か......? そう考えながら問いかける。


「ん?僕の能力は『封印』、能力の媒体としては鍵とか鎖を生成するんだけど......」


「この人、自分の作った鎖は離したら壊れるのに、持ってたら自分が動けなくなるんですよぉ」

 クスクス、と愉快そうに少女がわらう。


「ってことはあのとき僕を引っ張ったのは......」

そう、と彼は頷きながら。

「君を捕まえてから鎖を縮めたのさ、君はそのまま寝ちゃったけどね」

「......すごいですね、能力があるとそんなこともできるなんて」


 つい、皮肉が口からでる。

 助けてもらったのに、自分が持っていないからって......

「そんな良いものでもないよ、特に僕のはね」

少し悲しそうに、彼はそう言った。


「でも......持ってるだけで......!!持ってないよりいいじゃないですか......」

 かもね、と彼は困ったようにわらった。


「だけど、能力を持つ人間はその現象に強く引かれる。本能的にも、人間的にも」

「......それって」


 よく伝わる都市伝説だ、発火能力者がガスコンロに焼かれて死んだとか、水を操るはずの能力者が溺れて死ぬとか。


「そんなの都市伝説だ、ありえない」

 無能力だから。と馬鹿にされているのだろうか?

 僕はすこし怒気を含めた声でそう言い返した。


「都市伝説は真実に近い答えだ」

 まあ信じてくれないだろうけど、と言って。

「僕は鍵や鎖、そう言うのをコレクションしてるし、牧原は医療品を異常なほど集めてる、能力を使い続けるとそう言う......能力とより近付いていくって言うのかな? 副作用が生まれてくるんだ」




 それでも、持ってるだけでいいじゃないか、差別されないじゃないか。と口から溢れ落ちる。


「そう言うのをなくすために、俺たちは活動してるのさ」

「活動......?」

 その言葉に反応して、突然前門さんがポケットからスイッチを取り出した。

「全員集合!」


 突如、先程まで照らしていた蛍光灯の明かりが立ち消えた。

 一呼吸置いて天井からミラーボールが飛び出す。


「俺たちは!」

 不良のような男が右腕を天に突きだし。

「チーム!」

 牧原さんがその横で手を広げ。

「V...」

 前門さんが反対で同じポーズをとって。

「エーックス!」

 初老の男性がしゃがみながら手を地につけた。


「......」

すこしの空白、なんだこれという思考すら溢してしまいそうな沈黙の後


「......決まった」

「いや、きまってねぇから」


突っ込みだけが、生まれてきた。

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