チームVXは世界を救う!!
じゃがいも
プロローグ バディ
光の差さない路地裏。
文明発展、都市開発の掃き溜め。
イリーガルの入り口、アウトローの登竜門。
目覚めし者に影は差さない、暗き影は持たざるものに。
「やめてくだ......ぐぇっ」
暗い日々の当然の出来事。吐き出してしまいそうな、当たり前のように行使される悪意。
「やめねーよ、無能力者! オラァッ!」
持たざるものは奪われる、何もかもを。
コンクリートに血糊が飛ぶ。
なぜ奪われるのか。なぜ持たないだけで、ここまで嘲笑われるのか。
そう涙しても、その涙まで滑稽だと指をさされる。
「能力がないくせにここで生きていけると思ってんのかぁ?」
違う、と少年は答えられない。
少年は、本来ならばほとんどの人間がその力を自覚する10歳を過ぎても無能力の烙印を押されている。
「お前なんて、生きてる意味ねぇーんだよ」
そう、だ。
ぼくに生きている意味はない。
父さんも、母さんも、そう言っていたはずだ。
エリートの二人から生まれた無能。
決して許されない。社会の掃き溜めにぴったりな、そんな存在。
顔を殴られる、腹を蹴られる。
その衝撃に、何も入っていない胃から嗚咽と胃酸がこぼれ落ちる。
飛び散るその粘液が男のジーンズに降り注ぐ。
「おい、なにやってんだよォォ!!」
男の怒声、霞んだ視界に写る腕と、不健康そうな顔。
ガチャリ。と鉄のすり合う音が響く。
「それは僕たちのセリフだねぇ」
持ち上げられていた肉体が引っ張られる。
朦朧とする意識の中。己の体に絡まった鈍く光る鎖の輝きだけが、強く心に残った。
「うわぁ~、こりゃあ痛そうだ」
軽薄そうな男が、軽薄そうに前髪を書き上げながら右手をつきだした。
「お前も味わえよ」
男の尖った目が吊り上がり、伸ばした掌から深紅の炎が生まれでる。
「発火能力......!」
ご明察、と男は嗤う。
だが発火能力は力の大小さえあれど、結局は火を起こす能力。
ロングレンジは不得手なはずだ、何より弾速が遅い。と逃げ出そうとする暴行犯。
「そうさせないために、僕がいるのさ」
じゃらり。と
鉄がふれあう音がした。
「ぐぅおっ!?......おい!てめぇら!ふたりがかりで卑怯だとは......」
突如体を拘束した鎖。その根元を握る青年に、男は怒鳴り散らす。
「卑怯なのは君じゃないの? 能力を持たない人間をいたぶるなんて、誉められた趣味じゃないよ」
手綱を握る青年はそう言って、その鎖を締め上げる。
「剛、やっちゃって」
「ハッ......あいよ、いくぜいくぜぇ!」
剛。そう呼ばれた男が殴るように拳をつきだせば、燃え盛る炎が暴行犯へと迫る。
「お、俺だって能力が......ぇ!?あれ!?」
迫る業火。男が自衛に能力を発動しようとするも、何も起こらずに直撃する......事はなく、炎は散っていった。
「うわっ、こいつ漏らしてるよ」
剛がそう言うと、鎖を握る青年はその手をあわてて離す。
金属が砕けるような鈍い音を出して、鎖は少年の腕より断ち切れた。
「汚いなあ、男は根性っていうじゃないか」
「なら、こいつは男じゃないってことだな」
風上にもおけない、と剛は唾を吐き出す。
「汚いよ、剛」
うるせー。と彼は返事を返し、殴られて気絶していた少年を片手で持ち上げる。
「それよりこいつ、どうすんの?」
「んー、取り敢えず部屋までつれてこうか」
はいよ、と剛が少年を担ぐと、二人はあるきだした。
「なぁ、
んー? と気の抜けた返事。
「お前の鎖で運びやすくできないの?」
剛が睨み付けるように彼を見ると。
「無理だよ、だってあれだしてる間」
僕基本、動けないし。
ニヤリと笑って、そういった。
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