第41話  スピード違反

 ある日の朝出勤すると、三人の見なれない顔があった。どうやら新規入場者らしい。


 俺は、朝礼が始まるまでの間をみんなで雑談をしていたのだが、そこになんだか眠そうな顔をした正田さんが遅れて現れた。


「昨日は徹夜だよ」

 なんだか構ってほしそうに、そんな独り言を呟いている。

「昨日、何かあったのですか?」

 放っておけば良かったのだが、その構ってほしそうな雰囲気についほだされて訊いてしまった。


「神奈川にレンタカーを兄やんと二人で取りに行っていたんだ」

「えっ、わざわざ神奈川までレンタカーをですか?」

「今日から人数も増えるので、新しい移動車が必要になるからね」

「そう言えば新しい人が三人程、今日から来ているみたいですね」

 まあ、どうでも良いことだけど、取敢えず話を合わせて相槌をうつ。

「それで急遽昨日の夜、神奈川の本社へ取りに行っていたんだけど、高速なんか百八十キロでぶっ飛ばしてきたよ」

 正田さんは何故か自慢気に、そんなカミングアウトをいきなりぶちこんできた。俺としては聴きたくなかった。どう反応して良いのかも分からない。


 普通上に立つ人は、安全とかルールを守るということに厳しいはずである。正田さんも朝礼などでは、それらしきことをいつも言っていたはず。それなのにこの言動。俺には全く理解できなかった。

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