第12話  私待つわ

 長野の会社に書類を送ってから数日後、なにやら不審な電話があった。


 丸新興業の正田という人から、送られた書類で確認したいことがあるというのだ。それ自体は不審でもなんでもなく、訊かれたことには素直に答えて終わった。


 不審なのは、その会社名に俺は書類を送った覚えがないことである。その時点で三社に書類を送ってはいたが、丸新興業という社名はなかった。


「???」

 電話をしていた時は訊かれたことに答えなければと緊張していて、その不審は隅の方に追いやられていた。しかし電話が終わってみるとそれは、心の中心を侵略し始めたのだ。


 もやもやとした気持ちを抱えながらも何かをできる訳でもなく、俺にはただ待つことしかできなかった。

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