第11話 再発行
健康診断書を送ってから、約一週間が経った。にも拘らず何の反応もない。
俺は痺れを切らして電話で確認をした。それに対して「今、書類関係を福島の会社に送っていて選考してもらっています」という、にべもない返答だった。
選考は他でするのか? 自分の会社でするのじゃないのか。何か胡散臭さを感じた。山田さんが引っ掛かったような、いい加減な会社なのかも知れない。
急に不安になった俺は、ここだけに頼っていてはダメだと思い直した。
早速ネットで次を検索する。そうすると南相馬で日給一万七千円という好条件の求人があった。
賃金は安いよりは高い方がいい。誰でもそうだと思う。
その会社の住所を確認すると長野県だった。今までネットで確認した会社の所在地は、ほとんどの福島とは関係なさそうな県ばかりである。大坂、愛知、長野、群馬、神奈川、千葉等。他県から復興予算に群がる構図が目に見える。しかしそんなことにこだわっていては前に進めない。
俺はそんなことを考えながら、そこに応募する為に必要書類を集めようとして、はたと困った。健康診断書がないのである。健康診断書の原紙は先の会社に送ってしまっていた。
再度一万七千円を払って手に入れるのか? あまりにも勿体ない。まだ決まるまでに何社応募しなければならないのか分からないのである。
思い悩んだ末、病院に再発行してもらえないかと考えた。病院には控えが必ずあるはずである。その控えを元に再発行することは可能なはずだ。
俺は電話ではなく、直接病院に出向いていって交渉をする。しかし当初は、できないとの一点張りだった。納得できない俺は控えがあるはずだから、それを元に再発行は可能なはずだと頑張って主張した。俺も必死なのである。
時間は掛かったが前回の控えをコピーして、病院の印鑑を再度押して証明するということで決着した。費用は一枚二千円である。たかがコピーに印鑑を押すだけで二千円。やはり高いように思うのだけれど。
それを手に入れると俺はまず、コンビニに行ってカラーコピーを三部した。後から気付いたのだが、カラーコピーでも可というところが結構あるのだ。カラーコピーなら一枚五十円で済むが、再発行してもらうと二千円である。
俺はやっとのことで必要書類を揃えると、急ぎその会社に送った。
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