万葉集ブームというけれど……
ワタクシ昨年、鳥取市が主催する「大伴家持大賞」に投稿し入選した。佐佐木幸綱さんや小島ゆかりさんらに選んでいただいてとても嬉しかったのだけど、同時にちょっと慌ててしまった。というのもワタクシ大伴家持の歌をほとんど知らなかったもので。それで急いで、むか~しむかしそのむかし、親に買ってもらってそのまま放置していた児童向けの万葉集のダイジェストを引っ張り出して読んでみた。ポプラ社版の「古典文学全集」ってやつなんだがこれがなかなかガッツリした内容だった。歌の背景や歌人のエピソード、さらには巻末「解説」欄で正岡子規や与謝野鉄幹に与えた影響など、大人が読んでも読みごたえある内容。今回の元号「令和」の元になった「梅花の歌三十二首」の序文の事も書いてあった。
まあ、元号の引用元が「万葉集」だってことは、短歌やってる人間としては「ほうほう」という感じだし、外国人に会ったら「ジャパニーズ・トラディショナル・ショート・ポエムやってます。それは元号Reiwaが引用された本にいっぱい載ってます」と説明はしやすいだろう。
(でもね……)と思ってしまうのがひねくれ者のワタクシ。「万葉集のように天皇から庶民まで幅広い階層の人々の歌を集めた書物は世界に類を見ない」だの「万葉集を読めば日本人の文化水準の高さが分かる」とかドヤ顔で言う偉い方々を見ると、(なんだかなあ……)て感じに気持ちがシューーーッと冷めてしまうのである。
なんか、万葉集とか読むと、古代の一般庶民が今我々が新聞に短歌投稿するような要領で書いてどこかで発表したかのような錯覚に陥ってしまうけど、まさかそんなはずあるまい。教養ある偉い人達が庶民の間に伝わる歌を書き起こしたのが大半だと考えるのが普通だし、その過程でしらべや言葉の選び方に関して添削が行われている可能性もある。そう考えると世界のどの民族も庶民の間に伝わる歌を持っているし、それがそれぞれの民族の「叙事詩」や「伝説」にまとめられたかもしれない。「万葉集のような書物は世界に類を見ない」と断定し、またもや「日本スゴイ」論に持って行くのってどうよ? と思ってしまうのだ。
あとそれから、1000年以上前の日本人の文化程度が高くても低くても今の私には関係無く、したがって短歌やってる自分は偉いなんてことは全然思わない。
日本の文化や伝統は大切にしたいし、自分が短歌をやり始めたきっかけに、何か日本の伝統につながるものをやってみたい、という気持ちは間違いなくあった。けれども近頃、日本の文化について語られる際「他国に比べて」という余計な枕詞が入るのがなんとも鬱陶しい。
ワタクシ「カクヨム」では「虹の影は黒色」という現代小説を発表してるんだけど、その中にバングラデシュ人が登場する。彼を書くためにバングラデシュに関する本も何冊か読んでみた。するとバングラデシュにももの凄い詩歌の伝統と文化があることが分かった。日本の文化に興味を持つのは良いにしても、「日本の文化だけがすごいんだ」みたいな思考に陥りたくないものだと思う。
さて、「大伴家持大賞」に話は戻る。実はこの賞に、2首短歌を送ったた。
新しい膝の使い方一つ得て介護士私は更新される
新雪を溶かし始めたサンシャイン新入社員みたいにキラキラ
どっちが入選したのかいまだに分からないのだ!! 「膝」の方じゃないかと私は思ってるんだが……。
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