第4話 リーパのお婆ちゃん

「おば〜〜〜〜ちゃ〜〜〜〜ん!!!」   「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

二人の大声がヴァストーク・レスに響き渡った。

ルーチェはこんなに興奮した事は無かったし、マエロルはこんな速さを後ろ向きに飛んだ事は無かった。風圧のせいで進行方向が見えない上に、身体にルーチェの翼が当たらないか、気が気でなかった。しかしルーチェは何度かノーム”土の住人”に同じ事をしたことがあるので、加減を知っていた。


しばらくすると、森の真ん中の広場についた。広場には大きな菩提樹が大きな枝を広げて大きな屋根みたいになっている。地面に降ろすとマエロルはやっとホッとしたようだ。「ここはどこだ」 「私が見つかった場所だよ」 「へえ」

菩提樹の幹に手と額を当てる。樹液がゆっくり巡っていく音が聞こえる。

マエロルがそばに寄ってきたのがわかった。彼の手を取って幹に当てると緊張していた顔が和らいだ。


「おやおやワシに客かい?」

突然マエロルの眼の前で幹が真っ二つに割け、中から緑色のローブに菩提樹の絵が彫ってあるカメオをつけたお婆さんが出てきた。マエロルはまた尻餅をついて後退りした。  

「お婆ちゃん久しぶり。元気?」

「おお、ルーチェか。元気じゃよ。すまないねぇ、木の実しかないんだ。」

お婆ちゃんはリーパの実をいっぱい乗せたラスィエットゥ(皿)を取り出し、平らな根の上に置いた。  

「いいよ。お婆ちゃんの木の実美味しいから」

お婆ちゃんの隣に座ってリーパの実を一つ囓った。甘い味がした。

「そいつは頑張って実らせた甲斐があったよ。そっちのバンビーノ(男の子)もこっ

 ちにおいで。ヌプリケスングルみたいにとって喰ったりしないさ」

「ヌプリ…」   「ヌプリケスングル。”山麓に住む人”だよ」

マエロルは恐る恐る近ずいてきてリーパの実を手に取った。


「それでわざわざ私に会いに来たからには何か理由があるんだろうね」

さすがお婆ちゃん、鋭いな。

「マエロル-ああこの子ね-のコリェに私のディアデムと同じ紋章があったんだ」  「ほう。同じものなのかい」  「うん」  「見せておくれ」

二人同時に渡した。お婆ちゃんは二つを見比べたり、紋章をなぞったりした。「お婆ちゃんどう思う?」

「そうじゃな〜」 お婆ちゃんはしばらく考えるように目を閉じた。

「…」 「…」 「…」 「…グウ」 「お婆ちゃん、寝落ちしないで」

「ん、おお済まんな」 

お婆ちゃんは目を開けて、マエロルのことを興味深げに見た。好奇心で目がキラキラ輝いている。 「あの」  「なんだい?」

「僕の顔に何か付いてますか」

「いんや〜そんな事はないさ。たださすがは双子だと思ってね」 『双子?』

「おや、気づかなかったのかい?お前たちからは全く同じ’匂い’がするんだ。



 それは双子以外は有り得ない事なんだよ。」

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