第3話 アイク

「ここで議論しても分かんないな」「じゃあリーパのお婆ちゃんに聞いてみよ」

「リーパ(菩提樹)?お婆ちゃん?」  疑問に思った彼は少し目を細める。

「行ってくるねアイク。」    「ああ。」

木をポンポン叩くとそこから髪の長い青年の上半身が出てきて頭を撫でてくれた。後ろでマエロルが落ちる音がした。「大丈夫?」「どうした?」

二人で下を見るとマエロルがぽかんとした顔で私たちを見上げていた。

「…なんだ、そいつ?」   「ドリュアス”木の友”だが」

「見た事無いの?」  「ない」

きっぱりと言った彼の顔には驚きと好奇心にあふれていた。

「我々ドリュアスは木のニンフだ。ここでは珍しくないのだが、

 そなたはノティア・エリクォ(南の荒野)から来たようだな」

「…すげぇ。なんでわかるんだ」驚きは消え失せて、好奇心旺盛な顔になった。

「ははは。オトメユリのような子だ。そなたの足にあそこの土がこびり着いておる」「オトメユリ?」

「別名ヒメサユリ。ユリ科ユリ属の多年草で花言葉は純潔、好奇心、飾らぬ美だよ。」「それよりもそなた達はリーパ様の所に行くのだろう」「そうだった行ってきます」

私はマエロルの襟を背後から引っ張って飛び上がった。


アイクはその後姿を見つめていた。

「まさか、な」

そのつぶやきは誰にも聞かれなかった。

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