新たな冒険の始まり
「ん……」
何処かの草原で、セイルは目を覚ました。
周囲を見回せば、其処には意識を失っているウルザとコトリが倒れているのが見えて、セイルは小さく安堵の息を吐く。
最初この世界に来た日の事を思い出したからだが、あの時と違って今回はウルザとコトリが居てくれている。
……まあ、今回はアミルが居ない。知らず知らずのうちにアミルを頼りにしていた事もあってか、セイルはアミルが居ない事に僅かな寂しさを感じてしまう。
だが、そんな寂しさにかられている場合でもない。
「ウルザ、コトリ。起きろ」
「こ、こは……」
「うぬー。一体なんなんですかー?」
ウルザは素早く起きて周囲を見回し、コトリは頭がクラクラするのか、微妙に反応が悪い。
「さて、分からん……が、然程時間はたっていないように見える」
空を見上げれば、緑の月が浮かんでいる。
月の高さから見れば、あれから然程の時間は経過してはいない。
問題は、此処が一体何処であるのか……だ。
「恐らくは何処かに転移させられたんだろうが……まさか、元スラーラン皇国の何処かじゃないだろうな?」
「どうかしらね」
流石にスラーラン皇国の地形までウルザは把握していない。
此処が何処かの草原だろうという事しか分からないし、セイルも同じだ。
「とにかく、お前達が一緒で良かった。俺一人だと途方にくれていただろうしな」
「どうかしら。意外と何とかしそうな気もするけど……まあ、まずは現状把握から、かしらね」
「そうだな」
「現状……そういえば、セイル様が授かったピカピカしてるやつは何処に?」
そんなコトリの言葉に、セイルとウルザは思わず顔を見合わせる。
「そういえば……無いな」
「実は力的なもので、吸収された……とか、かしら?」
緑の月神の言葉を信じるなら、アレは緑の月神と青の月神の力が籠められたものであるらしい。
しかし緑の月神はセイル達を送り出す前に「最初の導きは私が」とも言っていた。
となると、セイル達を導くような何かであるはずなのだが……。
「カオスゲートを確認してみるか。何か追加されているなら分かるはずだ」
たとえば、それが能力的なモノであるならばカオスゲートでセイルの能力を確認すればすぐ分かる。
セイル
レベル30/99
物理攻撃:1400(+1700)
物理防御:1200(+510)
魔法防御:1200(+210)
【装備】
・ヴァルブレイド(☆☆☆☆☆★★)(レベル25/70)
・王族の鎧(☆☆☆★★★★)(レベル20/50)
【アビリティ】
・王族のカリスマ
・ヴァルスラッシュ
・協力攻撃
「……特に何も追加されてはいないな」
ではまさか、ウルザ達の方に何か追加されたのだろうか?
そんな事を考えながらセイルは「編成」の項目を選ぶ。
これは現在セイルと一緒に行動している仲間が表示されるのだが……。
「ん!?」
暗殺者ウルザ ☆☆☆★★★★
レベル22/50
物理攻撃:1110(+500)
物理防御:380(+192)
魔法防御:490(+192)
【装備】
・暗殺者の短剣(☆☆☆★★★★)(レベル20/50)
・暗殺服(☆☆★★★★★)(レベル20/30)
【アビリティ】
・暗殺者
・闇纏い
冒険商人コトリ ☆☆★★★★★
レベル12/30
魔法攻撃:570(+410)
物理防御:150(+91)
魔法防御:210(+90)
【装備】
・魔導銃レナスタ(☆☆★★★★★)(レベル20/30)
・商人の服(☆☆★★★★★)(レベル10/30)
【アビリティ】
・招集コール
導きの妖精ナンナ
レベル --/--
魔法攻撃:10
物理防御:20
魔法防御:3000(+500)
【装備】
・妖精の衣
【アビリティ】
・導きの風
・緑の加護
・青の祝福
「誰だ、これは……」
導きの妖精ナンナ。そんなユニットを引いた覚えはないし、そんなユニットが「カオスディスティニー」に存在した記憶もセイルにはない。
……となると、このナンナとやらの正体は見えてくる。
恐らくは緑の月神がセイルに授けたものとやらの正体が、このナンナなのだろう。
しかし、妖精というのは……精霊とはまた違うものなのだろうか?
「妖精、か」
「はーい、私が妖精だよー!」
そんな声と共に、セイルとカオスゲートの間にパッと小さな何かが姿を現す。
セイルの頭よりも小さい程度の人型のソレは、カオスゲートを持つセイルの手に座りヒラヒラと手を振る。
「初めまして! 私は貴方達を導くように使命と命を与えられた妖精、ナンナだよ!」
「……そうか。まず聞くがナンナ、君は一体『何』だ? 俺のカオスゲートに仲間として登録されているようだが」
「そのカオスゲートとかってのは分からないけど、私は貴方を導くように遣わされてるから。そのせいじゃないかなー?」
つまり緑の月神が何かした可能性があるが……ひょっとすると、仲間となれば現地の人間でもカオスゲートで確認できるのかもしれないとセイルは思う。
だが、その辺りを検証している暇は今はない。
「分かった。では早速導いて貰いたい。俺達はまず、何をすればいい?」
「そう、だなあ……まずは」
ドゴン、と。何かが爆発したような音が遠くで響く。
「……アレの解決っぽいかな?」
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