帝都進撃三日目:相互理解は重要
機闘士サーシャ ☆☆☆★★★★
レベル10/50
物理攻撃:680(+300)
物理防御:490(+70)
魔法防御:400(+30)
【アビリティ】
・攻性機甲(小)
・ライトニングアタック
「これは……どういう意味だ?」
「ちなみにコレがお前だ」
言いながらセイルがゲオルグに本人のステータスを見せると、ゲオルグは「フン」と鼻を鳴らす。
「なるほどな、大体理解した。儂は素の力ではこの小娘に勝るが、武器の差で負ける……と」
「まあ、それだけでは決まらんが……ああ、ゲオルグ。お前にはこの後合う武器を渡す予定だ」
「礼は言わんぞ」
「それは構わん」
セイルはそう言うと、カオスゲートをひとまず仕舞う。
「納得できたか? ゲオルグ」
「その奇妙な板切れの性能を今更疑う事はせん。白の月神とやらはふざけた仕組みを作るものだとは思うがな」
「そうか」
むっつりと黙り込んだゲオルグだが、そこで思い出したように「ああ、一応その小娘が使えるかもしれない事は認めてやる」とだけ呟く。
「別にヒゲに認めて貰わなくてもいいもんね!」
「フン」
あっかんべー、と舌を出すサーシャにセイルは溜息をつくと、その頭をコツンと叩く。
「やめろ、サーシャ。今はゲオルグも仲間なんだ」
「むー。でもあのヒゲ、ムカつくよう」
「仲良くな」
「セイルが言うなら頑張るけど……」
抱き着きながら言うサーシャの頭を撫でながらセイルは頷くが、そこにアミルが恐る恐ると言った様子で手を上げる。
「あの、セイル様。一つ気になった事があるのですが」
「なんだ?」
「その……えーと、サーシャのステータスに装備についての項目が無かった気がするのですが」
「ああ、それか」
セイルはカオスディスティニーの設定を思い出しながら、アミルへ答える。
「機人は、俺達の使う武器を使えない。機甲といってだな……成長と同時に纏っている専用装備も成長する。そういう仕組みになっているんだ」
「うん! 流石セイル、僕の事誰より分かってる!」
そう、機人はカオスディスティニーではかなり特殊な存在だ。
何しろ、初期の星の差を武器や防具で埋めることが出来ず、しかし武器も防具も無くとも初期の星相当の活躍は約束されている「特殊ユニット」だったのだ。
たとえば星3であるサーシャの場合は「攻性機甲(小)」と記されているが……これはレベルアップ時に武器にあたる攻撃の補正値に30が追加、防具にあたる防御の補正値に10が追加されるようになっている。
たとえばこの世界に来る時にセイルが「古代の機姫・アルファ」を引いていた場合は……今では有り得ない話ではあるが、もしその場合にはセイルはヴァルブレイドを持たない代わりに最強の一角になるとも言われた仲間を手に入れていたということでもある。
もっとも、そうなっていたらセイル自身は今よりもずっと弱くなっていたわけだから今更惜しいとも思わないが……つまり「機人」とはそういうモノなのだ。
まあ、そんな事をそのまま言うわけにもいかないのでセイルは「彼女達機人はそういう意味で特殊だ。分かっていない事もその分多いんだがな」と付け加える。
実際、新コンテンツであった機人についてはセイルも分からない事だらけだ。
サーシャについても、ほとんど知らないに等しい。
「とりあえず、これで戦力については解決した。野営の準備を始めるぞ」
「え、でもまだ朝だよ?」
「あー……サーシャ。あとで説明するから。とりあえず離れていてくれるか?」
「うん」
サーシャが軽く離れたのを確認すると、セイルはカオスゲートからテントを取り出す。
女性用一つ、男性用一つ。
全員が寝るには足りないが、交代で寝ているので何も問題はない。
続いて煮炊きの為の道具を取り出していくと、ゲオルグやクリスを除く全員がテキパキと動き始める。
「ねえねえ、あのヒゲと細い人は働いてないよ?」
「フン」
「私はこういうのは専門外でして」
「あー……二人とも。サーシャの教育に悪い。俺もやるから、全員でやろう」
アミルやイリーナ達があまりにもテキパキ働くので居なくても大丈夫なのだが、それが普通になってしまっては拙いとセイルは思う。
こういうものは仲間同士の一体感を作るものだというし、セイルも積極的に手伝うべきではあるだろう。
「よし、まずは飯の準備を」
「セイル様は座っててください! クリスはこっちの手伝いを! ゲオルグは……大人しくしててください!」
「ねえねえ、ボクはー?」
「セイル様の言う事をしっかり聞いていてください!」
「はーい」
しかしアミルのテキパキとした采配にセイルは言う事を無くし、ゲオルグはどっかりと座り込んで斧の点検を始めてしまう。
クリスはテントの設営を手伝い始めているようだが……まあ、アミルに任せていれば平気だろう。
「で、セイル。何を聞けばいいの?」
「そうだな……まずはこれまでの事と、俺達の状況について話しておこう」
そう言うとセイルは、サーシャへとゲオルグにしたような説明をするのだった。
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