帝都進撃三日目:訪れる空しさ
「……む」
ゲオルグの言葉に、セイルは思わず唸る。
確かにその通りだ。その通りではあるのだ。
「資金も無限じゃない。流石にガチャに全て使うというのはな」
「フン、金を大事にして命を失うか」
「ぐっ」
それを言われてしまうと、セイルとしても引くことは出来ない。
元々ガチャを控えていたのは仲間の為でもあった。
その一念がセイルの「ガチャを引く」衝動を抑えていたといってもいい。
しかし、それが否定された今……その枷は外れようとしている。
「……確かにその通りだな。俺はあまりにも遠くを見過ぎていたようだ」
「フン」
セイルの手の中で、カオスゲートが素早く操作されていく。
その動きはまさにガチャ熟練者のそれで、アミルが止める暇すらない。
そうして1ゴールドが消費され、カオスゲートが光り始める。
「ほう……」
ゲオルグが興味深そうにその光を眺める。
「美しい白い輝きだ」
「あー、いや。これは……」
白は星1。そして、無情にも光の色は変わらずガチャの結果が表示されていく。
布の服(☆★★★★★★)
布のローブ(☆★★★★★★)
ブーメランパンツ(☆★★★★★★)
鉄の槍(☆★★★★★★)
ライフウォ―ター
リペアキット
リペアキット
リペアキット
木の杖(☆★★★★★★)
可愛いローブ(☆★★★★★★)
「……うわあ」
見ていたアミルが思わずそんな声をあげる程に散々な結果である。
「ブーメランパンツ……?」
「欲しいか?」
「いや、要らないでありますが」
興味深そうにやってきたキースはそう言うと、再び倒れ込む。
ちなみにブーメランパンツは名前の通り男性用水着な装備であるが、そのステータスを見る気にすらならなかった。
「よし、もう1回だ」
鉄の刀(☆★★★★★★)
竹槍(☆★★★★★★)
派手な服(☆★★★★★★)
鉄の爪(☆★★★★★★)
アンチパラライズ
玩具の銃(☆★★★★★★)
木刀(☆★★★★★★)
リペアキット
草刈り鎌(☆★★★★★★)
木の棍棒(☆★★★★★★)
「……セイル様、もうおやめになったほうがいいのでは」
心配そうに告げてくるアミルに、セイルは額を押さえながら考える。
確かに止めた方がいいかもしれない。
限界までガチャを引いてやると考えていた頭が、急に冷えてくる。
なんだか呪われてでもいそうな運の悪さだ。
しかし、呪われていればクリスが気付いているはずだ。
となると、単にガチャ運が悪いだけのようにも思える。
「いや、もう1回引こう。このままは終われん」
そう言って、セイルは10連ガチャをもう1回タップする。
錬金具(☆★★★★★★)
錆びた剣(☆★★★★★★)
アンチポイズン
鋼の斧(☆☆★★★★★)
鉄の鎧(☆★★★★★★)
アイアンショット(☆★★★★★★)
鉄の胸当て(☆★★★★★★)
鉄のサーベル(☆★★★★★★)
鉄のレイピア(☆★★★★★★)
鉄の陰陽剣(☆★★★★★★)
「……ハハ、見ろアミル。鋼の斧だ。そういえばゲオルグにも強い武具を渡さないといけないな」
「セ、セイル様……そんな遠い目をなさって。やっぱりもう今日はガチャはやめましょう!?」
「むう、初めて見る荒んだ目だな」
「だ、誰のせいだと思ってるですか!」
「そいつの運の無さのせいだろう」
1人冷静なゲオルグと、激昂するアミルの前でセイルは10連ガチャをもう1回引く。
ちなみに、これで残りの資金は6ゴールド2シルバー38ブロンズだ。
「ん……?」
そしてカオスゲートから溢れたのは、星3を約束する赤い光。
「見ろ、アミル……! 星3だ!」
「え、お、おめでとうございますセイル様!?」
「よし、これで!」
興奮するセイルの目の前に、ガチャ結果が表示されていく。
ガードウォ―ター
鉄の鎌(☆★★★★★★)
革の鞭(☆★★★★★★)
鉄の短剣(☆★★★★★★)
木の弓(☆★★★★★★)
錆びた槍(☆★★★★★★)
道化服(☆★★★★★★)
フリルの水着(☆☆☆★★★★)
鉄の大剣(☆★★★★★★)
武装靴(☆★★★★★★)
「……」
「……」
セイルとアミルは、思わず顔を見合わせる。
喜んでしまっただけに、どう反応していいのか分からず2人とも真顔である。
「どうした、何か良い物が出たのだろう?」
「……」
「なんだ。悪かったのか」
「……フリルの水着だそうだ」
「は?」
「見せてやる」
そう言うと、セイルはフリルの水着のアイテム詳細をゲオルグへと向ける。
名称:フリルの水着
レベル:1/1(最大)
種別:鎧
物理防御:0
魔法防御:0
【付属アビリティ】
・回避率UP(超極小)
・先制攻撃(超極小)
・魅了(超極小)
・水フィールドでの行動に補正(小)
夏を豊かにする可愛い水着。秋冬にはちょっと辛いかも?
「……なんだコレは」
「フリルの水着だ」
「何故こんなものが神から授かったガチャに入っている」
「そういうモノなんだ」
「ふざけているな」
「俺もそう思う」
正確にはふざけているのはカオスディスティニーの運営であって、あの少年神は特に精査せず現実にしただけなのだろうが……その辺りは精査してほしかったとセイルは切実に思っていた。
そうしてくれれば……こんな、空しい気持ちにはならなかっただろうから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます