イケメンは大抵レア度が高い

「え、えっと……セイル様、そのお二人は……」

「新しい仲間だ」


 そう言いながらブラックカードを取り出すセイルだが、冒険者ギルドの女性職員はあからさまに脅えていた。

 まあ、仕方がないだろう。

 セイルの後ろに立っているのは、セイルよりも大きい2人の男達だ。

 

「自分はガレスです」


 そう言うのは、紳士的な笑みを浮かべた全身鎧の男。

 威圧しないようにと兜を外し小脇に抱えているが、その中から出てきたのは剃っているのかツルリと光る頭と、歴戦の戦士の如くゴツく険しい顔。

 紳士的な笑み……とは言ったが、女性職員から見れば獲物を見つけた山賊の笑みにも似ている。


「ヒッ……」


 思わず女性職員は引いてしまうが、そこに豪快な笑い声をあげたのはもう1人の男だ。


「ハハハ、ガレス! お主の顔は怖いんじゃから、真面目な顔をしてろと言ったろう! それ、脅えておるわ!」

「む……」

「お嬢さん、ワシはオーガンという者じゃ。冒険者登録については聞いておるから、お願いできるかのう?」


 対するオーガンと名乗った大男は、その筋肉質の身体を何処の神殿のものか分からない黒い神官服に包んでいる。

 怖さでいえば同じくらいだったりするのだが、それでも女性職員がガレスよりオーガンを多少マシだと感じたのは……オーガンが見事な白髪をオールバックに整え、美しく手入れした髭を蓄えた老齢の男であったからだろうか。

 若い頃は相当な美形であったことを思わせるオーガンは、好々爺といった風の笑みを女性職員へと向ける。


「え。は、はい……それでは、こちらに触れて頂けますか?」

「うむ」


 水晶をカウンターの上に差し出してきた女性職員の手をオーガンは自然な動きで握る。

 

「え。あ、あの。私の手ではなく……」

「おお、すまん。あまりに美しい手だったからのう」


 嫌らしさを全く感じさせないその笑みに女性職員は照れたように顔を赤くするが……セイルの咳払いに、女性職員はハッとしたようにオーガンの手から逃れる。


「おっと。そうじゃった。この水晶に触れるんじゃったの?」


 言いながらオーガンが水晶に触れると黄金の輝きを放ち始めるが……光属性を示すその輝きに、ギルド内が騒めき始める。


「お、オーガン様のカードはこちらになります」

「うむ。次はガレスじゃな」


 ガレスは無属性の弱く白い輝きであった為、特に注目される事もなかったが……オーガンはギルド内の視線を一身に集めていた。


「また光属性かよ……」

「あのジジイ、神官だろ? どうやって引っ張ってきたんだ……」


 ボソボソと囁き合う冒険者達だが、やがて1人の男がセイル達へと近づいてくる。

 鋼の鎧らしきものを纏ったその剣士は、まずはセイルに「よう」と軽く挨拶をしてくる。


「お前、さっき副支部長とやり合ってた奴だろ?」

「本意ではないがな」

「ハハ……ああ、俺はストリオ。「紅蓮の剛剣」のリーダーだ」

「セイルだ。で、何か用か?」


 何か用か、と聞いてはみたが……このタイミングで話しかけてくるという事は大体内容は予想できる。


「ああ、お前のパーティさ。もう結構な人数だろ?」

「8人だな」

「……もうクランに近くなってくるな。維持も大変なんじゃないのか?」

「そうでもない」


 実は部屋を一部屋追加したが、それはさておき。


「さっきの子もそうだが、どうやって仲間を見つけてくるんだ?」

「ちょっとしたツテがあるからな」

「ツテ……ああ、そういうことか」


 恐らくはアンゼリカのツテと勘違いしたのだろう、「なるほどなあ」などと頷くストリオにわざわざ訂正する事はしない。

 元々カオスゲートの事を説明する気はないから、そうやって誤解するように仕向けたのだ。


「そういえば、副支部長はどうしたんだ? またすぐに出てくると思ったが」

「二階にでもいるんじゃねえのか? まさかこんなにまたすぐ来るとは思ってねえだろ」

「そうか。平和でいいな」

「ハハッ! ま、頑張れよ。あと、いい人材居たらこっちにも紹介してくれ」


 そんな事を言いながらストリオは離れていくが……その様子を見るに、顔繫ぎ程度の目的だったのだろう。

 他にも話しかけようと何人かが動き始めるが、ガレスがノシノシと歩いてくるのを見ると動きが止まる。


「セイル様、お待たせしました。パーティ登録含め、無事終了です」

「ああ。ならアミル達と合流するか」


 全員で行くことはないとアミル達は出発準備をして西門に向かっている。

 2人の冒険者登録とパーティ登録が終わってしまえば、あとは合流するだけだ。

 いかにも強そうな男2人を連れ歩くセイルに何処かから「アイツ、女以外も仲間に入れるんだな……」などと失礼極まりない暴言が聞こえてきたが、とりあえず聞こえない振りをする。

 そもそも今までだってエイスが居たのに見えてなかったのだろうか?


 まあ、そんな強そうな2人ではあるが……レベルの関係上、今はアミル達の方が強い。

 具体的にはこのような感じである。


王国重装兵ガレス ☆☆★★★★★

レベル1/30

物理攻撃:100(+100)

物理防御:250(+250)

魔法防御:50


【装備】

・ハルバード(☆☆★★★★★)

・ビッグシールド(☆☆★★★★★)

・スーツアーマー(☆☆★★★★★)



王国神官オーガン ☆★★★★★★

レベル1/20

魔法攻撃:250(+10)

物理防御:20(+5)

魔法防御:50(+10)


【装備】

・鉄のメイス(☆★★★★★★)

・鉄の盾(☆★★★★★★)

・神官服(☆★★★★★★)


【魔力属性】

・光


 見た目こそ頼りになるが、途中である程度レベル上げをする必要があるだろう。

 そんな事を考えながら、セイルは合流場所へと向かっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る