運命を感じ始めたら、ちょっと止まった方がいい
「え、迫られてる気がするって……まさか今引いたの以外にも居たりするんですか?」
「む」
そんなエイスの言葉に、セイルは「そういえば知ってるのはウルザだけだったか……」と呟く。
重装兵を引いた時、その場にはウルザ以外居なかったのだ。
「考えてみりゃ、前衛ってセイル様とアミルちゃんだけじゃないですか。ウルザの姐さんは前衛に数えるにはちょっとアレですし」
「まあ、そうだな」
といっても、今はクロスが居る。
クロスの召喚するソルジャーアーマーは重装兵程ではないが充分に硬い。
しかも必要な時だけ喚べるので生活コストもかからない。
今必要としている神官と比べれば優先度は低い。
「男女比の問題もありますし……確か2つあれば星2とかってのに出来るんでしょ? 呼びましょうよ」
「いい考えだと思うです」
「ふむ……」
イリーナまでが同意し、セイルは悩むようにカオスゲートを指で叩く。
確かに、重装兵を喚べば防御の面で更に堅固になる。
クロスが居なければ、今回の戦いの為に重装兵を喚んでいたのは間違いない。
間違いないが……クロスが居る以上、慌てて喚ぶ必要が無いのも事実なのだ。
「まあ、もう少しガチャを引いてから考えよう」
10連で1シルバーを消費。
ガチャ結果:
鉄の鎌(☆★★★★★★)
錬金具(☆★★★★★★)
鉄の弓(☆★★★★★★)
鉄の剣(☆★★★★★★)
防毒の護り(☆☆★★★★★)
錆びた剣(☆★★★★★★)
鉄の鎧(☆★★★★★★)
鉄の胸当て(☆★★★★★★)
鉄のレイピア(☆★★★★★★)
鉄の陰陽剣(☆★★★★★★)
「む、珍しいものが出たな」
「え、どれですか?」
ガチャ画面を覗き込むアミルに見せるように、セイルはカオスゲートから防毒の護りを取り出す。
小さな緑色の宝石を銀の鎖で繋いだネックレスのようなそれは武器や防具と同じ武具カテゴリーであり、それでいて出現確率の恐ろしく低い「アクセサリー」の一つだ。
防毒の護りはアクセサリーの中では「無くてもいいが、あったら便利」といった程度のものだ。
具体的な効果としては「毒にかかる確率の減少(小)」であり、毒の沼などに踏み込んでも毒状態にならない可能性が少しある……といったような効果だったりする。
「これは……そうだな。イリーナにやろう」
「ありがとう、です」
毒にかかって最初に倒れるのは、体力の低い後衛職だ。
となると候補はイリーナ、エイス、クロスだが……星3ユニットであるクロスに多少余裕があることを考えると候補から外れる。
そして体力のある男のエイスよりはイリーナだろう、という消去法だ。
しかし嬉しそうに防毒の護りを付けるイリーナを羨ましそうに見ていたクロスから、チクチクとした視線がセイルへと向けられる。
「あー……クロスは次、な」
「約束」
頷くクロスに曖昧な笑みを返しながらも、セイルは次の10連ガチャを引き1シルバー消費する。
ガチャ結果:
鋼の槍(☆☆★★★★★)
鉄の弓(☆★★★★★★)
執事服(☆★★★★★★)
鉄のサーベル(☆★★★★★★)
道化服(☆★★★★★★)
鉄の斧(☆★★★★★★)
鉄の剣(☆★★★★★★)
アイアンショット(☆★★★★★★)
鉄の大剣(☆★★★★★★)
木剣(☆★★★★★★)
「うーむ……」
これは、いよいよ今日はダメかもしれない。
丁度次で100連のはずだ。それでダメなら神官を狙うのは次回で良いだろう。
あるいは神官ではなく重装兵を先に喚ぶ事で、物理防御方面での護りを更に強固にしてもいい。
「これが運命の選択……だな」
そんな事を言いながら、セイルは10連ガチャを引く。
ガチャ結果:
鉄の剣(☆★★★★★★)
鉄の盾(☆★★★★★★)
鉄の盾(☆★★★★★★)
鉄のシミター(☆★★★★★★)
王国神官【男】(☆★★★★★★)
鉄の短刀(☆★★★★★★)
トランプ(☆★★★★★★)
布の服(☆★★★★★★)
錆びた剣(☆★★★★★★)
鉄の槍(☆★★★★★★)
「よし……よし! きたぞ、神官だ! 狙い通りだ! ハハハ、やはりこれは運命だな!」
「おおー……出るもんなんですねえ。こりゃ確かに運命っつーのも否定できないですけど」
思わずガッツポーズをするセイルにエイスはそんな感想を漏らし……そこで、アミル達と顔を見合せ何度か視線でやりとりした後に、何かを観念したように溜息をつく。
「えーと……すんませんセイル様、ちょっといいです?」
「ん? なんだ?」
「結局二人喚ぶんですかね?」
「いや、今回は神官だけ喚ぶつもりだが」
それがどうした、とセイルが聞くと、再び全員が顔を見合わせる。
「なんか、可哀想です」
「……運命というなら、装備が揃ってる重装兵も喚んであげるべき」
「どのみち、前衛陣の強化は必要でしょ? 重装兵も喚んでいいんじゃないですかねえ」
イリーナ、クロス、エイスと順にそんな事を言い始め、セイルはうっ、と唸る。
「いや、それはそうかもしれないが……コストの問題もあるぞ。なあ、アミル」
そう言ってセイルがアミルに同意を求めると、アミルは身体の前で手を絡めるようにして遊ばせながら、「えっと……」と困ったような顔をする。
「それは、そうなんですが。喚ばれないっていうのも可哀想かな……と」
同じ王国の仲間ですし、と呟くアミル。
2人呼べばその分生活コストも上がる。
しかしながら、自分の立場に置き換えると反対とは言えないのだろう。
「喚べばいいじゃない。大丈夫よ。今回の仕事をクリアすれば支部長からお金引っ張れるでしょ?」
戻ってきたウルザにまでそう言われてしまえば……セイルとしても、反対する理由は無かった。
「……ま、確かにな。しかし、いよいよ拠点を探す必要が出てくるな……」
そう呟くと、セイルは2人を召喚するべくカオスゲートに触れた。
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