オーク集落の戦い2
セイルとオークジェネラル達の戦いがヒートアップしていく中で、アミル達の戦いも激化していた。
オークアーチャーをウルザが隙をみて仕留めているといえど、オークの全てが遠距離攻撃というわけでもない。
むしろほとんどのオークは近距離攻撃が主体であり、イリーナとエイスの攻撃が「対単体」である以上は、オーク達とてそれを潰せばいいと当然考える。
そして何より、数の上ではオーク達の方が上なのだ。
オークジェネラルは当然勝つと信じているからこそ、オーク達の狙いはセイルではなくアミル達へと向く。
「ウオオオオオオオ!」
「死ネエエエエエ!」
石斧だけではなく、鉄剣や鉄斧を構えたオーク達がアミル達へと向けて殺到する。
「ダーク……!」
先頭を走るオークを、イリーナの魔法が消滅させる。
ゴブリンよりはずっと強いはずのオークだが、イリーナの魔法は一撃でそれを消滅させている。
エイスの弓による攻撃も一撃というわけにはいかないが、かなりの戦果をあげており……しかし、この状況ではどちらかというとイリーナの方が頼りになる。
そこでエイスは早々にイリーナの援護に回っているが、それとて限度がある。
「やらせはしません……!」
エイスとイリーナの攻撃を潜り抜けてやってきたオークの鉄斧をアミルは鋼の盾で受け止め、カウンターを放つように剣で突き刺す。
「グアッ……」
「はあっ!」
流石にそれで一撃というわけにはいかなかったのだろう。下がろうとするオークに、踏み込んだアミルの一閃が襲い掛かり打ち倒す。
だがその隙を狙って別のオークがアミルへと襲い掛かり、イリーナのダークの魔法で頭部を消滅させ倒れていく。
だが、それでは終わらない。
「ガアアアアア!」
「くっ!」
アミルの肩鎧を、オークの剣が叩く。
鋼の鎧はオークの攻撃を通しはしないが、それでも衝撃は伝わる。
ビリビリと響く感覚に耐えながらも、アミルは別方向から襲ってくるオークの攻撃を盾で弾く。
四方八方から襲ってくるオークをどうにか出来ているのは、アミルを狙うオークを優先してイリーナやエイスが攻撃しているからであり……しかし、それとて限度がある。
そして何より。アミルを足止めしている間にイリーナやエイスをどうにかすればいいなどということ、オークだって分かっている。
「今ダ、狙エ!」
3体のオークがアミルへと一斉に襲い掛かり、その間に別のオークがその横を突破していく。
放たれたエイスの矢を受けながらも、オークは止まらない。
その狙う先は、当然イリーナ。イリーナもならばと杖を向けるが……その口が詠唱を紡ぐその前に、オークは斧を投げる。
「えっ……」
風を裂いて飛ぶ斧。イリーナは慌てて杖で防御しようとするが、それが間に合うはずもなく。
しかし、それが届く前に一本のナイフがそれを弾き飛ばす。
「……はあ、もう。私はこういうの得意じゃないのよね」
「ウルザ……」
そう、投げられた斧を弾いたのは遊撃の役割であるはずのウルザだった。
「ぼうっとしない! 魔法!」
「ダ、ダーク!」
「ギャ……」
武器を失ったオークはアッサリとイリーナのダークで消滅し、続けて襲ってくるオークの剣をナイフで受けながらウルザはその手元を狙って切り裂いていく。
「ギアッ……!」
痛みにオークが武器を手放したその瞬間、ウルザはその剣を足で弾いて拾いオークへと深々と突き刺す。
「ゴ……ァッ……」
「うお……すげっ……」
「エイス! 貴方もさっさと撃つ! もっと目を狙いなさい!」
「え、は、はい!」
「全く、どいつもこいつも綺麗な戦い方してんじゃないわよ!」
言いながら、ウルザは次のオークへと斬りかかっていく。
急所を狙うかのようなその戦い方は確かに攻撃力こそ低いが、的確にオークを無力化させていく。
「アミル! 貴方もよ! 盾だって武器になるんだから、もっと頭使いなさい!」
「この……っ!」
好き勝手言うなと。そんな反発心を覚えながらも、アミルは盾でオークの顎を打ち上げる。
確かに、型通りの綺麗な戦い方に知らずのうちに拘っていたかもしれない。
それが何故かは分からない。ずっとそうしていたから……のような気もする。
分からないし、悔しいが……ウルザの言う通りでもあるのだ。
「えいやあっ!」
ブーツで、思い切りオークの脛を蹴る。
ろくに鎧で保護されていないオークにはそれだけでもかなりのダメージになり、オークは悲鳴をあげる。
そうして出来た致命的な隙に斬りかかり無力化し、別方向から襲ってきたオークの腕を盾で打ち据える。そしてついでとばかりに盾をスイングして槌のようにしてオークを叩く。
「やるじゃない、その調子よ」
「言われずとも……!」
そう、アミルは兵士であって騎士ではない。お綺麗な戦い方にこだわる必要など何処にもない。
定石など、何の意味もないのだ。
「かかってきなさい、オーク共!」
「人間ガアアアア!」
襲ってきたオークを、アミルの剣が縦一文字に切り裂く。
なんとなく……本当になんとなくなのだが、戦いの中でアミルは自分が更に強くなった事を確信していた。
それは慣れたとか熟練したとかではなく、文字通り自分が一段階「上」へと上がったような感覚。
それを感じながら、アミルは次のオークを睨みつける。
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