森への出撃準備
「……なるほど、話は理解できました。オークですか……元の世界じゃ結構な強敵だった記憶がありますけど」
「そうだな。だがゴブリンも元の世界とは強さに違いがあった。オークも元の世界のものより弱い可能性もあれば、当然強い可能性だってあるだろう」
セイルがそう言うと、エイスは納得したように頷く。
……ちなみにだが、エイスの今の能力はこんな感じだ。
狩人エイス ☆★★★★★★
レベル1/20
物理攻撃:100
物理防御:50
魔法防御:10
【装備】
・弓
・服
正直に言って、能力的にはかなり頼りない。
だがカオスディスティニーにおいて弓使いは射程が3あった為、貴重な長射程ユニットとして一定の需要はあったのだ。
この世界で弓使いがどの程度役に立つのかは不明だが……エイスの持っている矢筒には、矢は入っていない。
「そういえばエイス、お前の矢だが……」
そう聞くと、エイスは自分の腰の矢筒に触れてほっとした顔をする。
「ああ、大丈夫ですよ。俺の矢筒はちゃんとこの世界に持ってこれてますし」
「そうか」
どういう意味だ、とは聞かない。恐らく「セイル」として知っていて当然の知識だろうからだ。
確かカオスディスティニーでは弓使いはどういう理屈か矢切れといったような事は起こりえなかった……まあ、もしそんなのが起こったら「弓使い不遇!」とか「弓使いとか外れすぎて……」とか爆死ユニット扱いされて大炎上だっただろうが、それはともかく。
もしそれが現実になっているとしたら、無限に矢の湧き出る矢筒なんてものを持っている可能性だってある。
「なら、お前にこの弓を渡しておく」
鋼の弓をエイスに渡すと、エイスは感激したような顔でそれを受け取る。
「鋼の弓ですか! へえ、これは……良い弓ですね!」
当然だ。星2の鋼の弓。威力80の武器で、同じ星2の鋼の剣50と比べても威力が高い。
恐らくは弓使いの脆さもあって威力が高めに設定されているのだろうが……。
それにしても、そう考えるとやはり星2にしても威力が15しかない鉄の剣は弱い。
「……アミル」
「はい?」
「お前にもこれを渡しておく」
そう言うと、セイルはカオスゲートから鋼の剣と鋼の鎧、そして鋼の盾を取り出す。
「え? え? これって……鋼の装備一式じゃ」
「ああ。現状ではお前に渡すのが最善だと判断した」
重騎士レイアが来たならそちらに渡すのが最善だったが、現状の戦力ではアミルに渡すのが一番いい。
まあ、鋼の剣は1本しかないのだが……ケチってオークにやられるよりは、もう1度10連ガチャをやれば出るかもしれない鋼の剣の方が惜しくはない。
ついでに盾だが、これはちょっとした実験だ。
そもそも「盾」関連の装備は誰でも装備できる「武器」であり、装備すると防御力が上がる武器だった。
しかも剣装備ユニットが使えば何処からか剣が、弓装備ユニットが使えば何処からか弓が攻撃時に出てくる謎武器でもあった。
だが現実になった今は、同時装備だって出来る……はずだ。
ガチャガチャと装備を付け直したアミルは、嬉しそうにその姿をセイルに見せてくる。
「どうですか、セイル様! 似合ってますか!?」
「ああ、似合ってる。強そうだぞ」
実際、強い。
今のアミルのステータスはこうだ。
王国剣兵アミル ☆☆★★★★★
レベル3/30
物理攻撃:300(+70)
物理防御:200(+80)
魔法防御:60
【装備】
・鋼の剣(☆☆★★★★★)
・鋼の盾(☆☆★★★★★)
・鋼の鎧(☆☆★★★★★)
鋼の剣が攻撃力50。
鋼の盾が攻撃力20、防御力30。
鋼の鎧が防御力50。
合計して物理攻撃が370、物理防御が280。
物理関連でいえば、レベル1のセイルの素の能力に迫るようなものになっている。
「イリーナにも鋼の杖を渡しておく」
「はい、です」
出し惜しみはしない。イリーナの能力はこうなった。
王国魔法兵イリーナ ☆★★★★★★
レベル3/20
魔法攻撃:250(+30)
物理攻撃:0(+10)
物理防御:10(+2)
魔法防御:150(+10)
・鋼の杖(☆☆★★★★★)
・布のローブ(☆★★★★★★)
【魔力属性】
・闇
物理攻撃と物理防御が微妙に上がっているのは、鋼の杖の副次効果だ。
そして、エイスがこうなった。
狩人エイス ☆★★★★★★
レベル1/20
物理攻撃:100(+80)
物理防御:50
魔法防御:10
【装備】
・鋼の弓(☆☆★★★★★)
・服
服に関してはまだ出ていないし、もし出てきたとしてもウルザを最優先にせざるを得ない。
まあ、この辺りは我慢して貰うしかないだろう。
「……ま、それはさておきだ」
騒がしさに目を覚ましたのか、布団から顔を出しているウルザに向けてセイルは鉄の短剣を出してウルザの横に置く。
「これはお前のだ。俺とエイスは外に出てるから、着替えてろ」
「あら、私のは鋼製じゃないの?」
「……短剣は、他には錆びた短剣しかなくてな」
錆びた武器シリーズは特殊な使い道があるのだが、それに関しては今はどうしようもない。
「ガチャを引いて良いモノが出たら渡すから、それで我慢してくれ」
「分かったわ」
そう答えるのを聞いて、セイルはエイスを伴って部屋の外に出る。
「……王子」
「セイルと呼んでくれと言っただろ……なんだ?」
「おう……セイル様はずっとあの三人と同じ部屋で……?」
「ウルザは違うぞ。あと、お前の思っているような事はない」
羨ましそうなエイスに、セイルは淡々とそう答える。
無いものはないのだから、仕方ない。
セイルは今時の草食系男子である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます