進化
ユニットの進化を選択し、アミルをベースに王国剣兵【女】を素材に選択する。
費用は10シルバー。支払いを選択し、「進化」を選択。
その瞬間、アミルの姿が星2を示す青い光に包まれる。
「あ、これは……」
「進化の光だ。怖いものじゃない」
立ち上がったアミルにセイルがそう告げれば、アミルは僅かに脅えた表情を見せながらも頷く。
「はい。私の中に何かが入ってくるのを感じます……これは……」
アミルを包む青い光は回転し、その全てを覆い隠すほどに強くなる。
「これは……魔力……? いえ、もっと何か別の……」
青い光を見ていたイリーナの呟きに、セイルは恐らく神の力なのだろうという感想を抱く。
ガチャ、そして進化。この人の範疇を超えた力が魔法でなくてなんだというのか。
アミルを包んでいた光はカオスゲートから聞こえてきたピロン、という電子音に似た音と同時に消え……そこには、呆然とした顔のアミルの姿があった。
「力が……溢れてくる……なんだかこう、もっと強くなれそうな気がします……!」
呆然とした顔は自然と喜びの色に満ちていく。実際、強くなっただろう。
セイルは早速カオスゲートでアミルのステータスを表示させる。
王国剣兵アミル ☆☆★★★★★
レベル3/30
物理攻撃:300(+15)
物理防御:200(+10)
魔法防御:60
【装備】
・鉄の剣(☆☆★★★★★)
・鉄の鎧(☆★★★★★★)
進化した事で能力に補正がかかってはいるが……やはり、セイルよりも能力の伸びが良くない。
この辺りは星の数の少ないキャラの運命だ。最終的には星の数の多いキャラにあっさり負ける。
そういう宿命なのだ。まあ、この世界では然程問題にはならないだろうと思ってはいるが……。
ついでとばかりにアミルの鉄の剣を星3へと進化させ、攻撃力を30へとアップさせる。
本来であれば此処から更に鉄の剣のレベルもアップさせるのだが……今は必要ないだろう。
「さて、次は……いよいよだな」
暗殺者ウルザ。星3である以上、素の能力や将来性はアミルやイリーナより上のはずだが……そもそもウルザの職業である「暗殺者」というのは近接戦闘においてはあまり強力な職業ではない。
系統としては短剣職である「盗賊」などと同じで、カオスディスティニーにおいては「回避力が高く命中率も高いが攻撃力は低い」というキャラだった。
実際、ステータスはこのような感じだ。
暗殺者ウルザ ☆☆☆★★★★
レベル1/50
物理攻撃:200
物理防御:50
魔法防御:50
【装備】
・短剣
・服
【アビリティ】
・暗殺者
・闇纏い
「暗殺者」は複合効果のある能力だ。回避率上昇、低確率で敵を一撃で仕留める「急所攻撃」の発動、鍵のかかった扉開け……とまあ、そんな感じだ。
「闇纏い」は確かウルザ固有のアビリティで、遠距離攻撃の対象にならないという能力だったはずだ。
まあ、その能力を使って敵に近づいたところで近距離ユニット相手では素の能力が違い過ぎて勝負にはならなかったのだが……それはさておき。
「では、ウルザを喚ぶぞ」
「はい、いつでも!」
早速武器に手をかけているアミルとイリーナを宥めると、セイルはウルザを呼ぶ準備を整える。
暗殺者ウルザを召喚しますか?
「はい」を選べば、今まで同様にカオスゲートが光り、一人の黒装束の女の姿が構築されていく。
その姿は、アミルやイリーナと比べても成熟された女そのもの。
引き締まった身体は鍛えられており、それでいて隠し切れない女性的な魅力に溢れている。
口元までを覆った覆面はしかし、ウルザの美しさを尚も引き立てる。
短く切った青髪は何処となく男性的ではあるものの、それすらも大人の女の魅力を高める要因となっている。
切れ長の目は閉じられていて尚美しく……ゆっくりと開かれていく先に見える青い瞳は、サファイアの輝きをも思わせた。
「貴方は……」
「ようこそ、ウルザ。早速だ、が……」
その行動は、瞬時。姿勢をほとんど変えないままに距離を詰めると、ウルザは短剣を引き抜きセイルへと斬りかかる。
「セイルさ……」
アミルが行動を起こすも、すでに間に合わない。
イリーナの魔法ではセイルを巻き込んでしまう。
だが、それよりも早く……ウルザの短剣は腕ごとセイルに押さえられていた。
「……くっ……」
「もしかしたらと思ったが……お前、俺を殺そうとして逃げた「直後」のウルザだな……?」
暗殺イベントの後、ウルザはストーリーには全く絡んできていない。
そして考えてみれば、ウルザは「帝国」の正式な民というわけでもない。
どう考えても裏組織の人間で、しかもストーリーが用意されていない「仲間になった経緯が不明」なキャラだ。
友好度を上げればサブストーリーも展開されはするが、そこでも仲間になった経緯への言及はない。
其処に至るまでに、もう1度「こういう事」があったとしたら。
今の状況は、まさにそれだった。
「丁度いい……殺すわ、王子……!」
「うおっ!?」
よく分からない動きで掴んでいた腕を外され、再び襲ってくる短剣をセイルは回避する。
「待て、ウルザ! 今の状況を……」
「少し会わないうちにおしゃべりになったわね! 寡黙だった貴方の方が魅力的よ!」
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