ver 00.5
『大部分のギルドメンバーが取り込まれた後、未知の現象に皆、混乱し喧嘩が絶えなくなりました。そんな中、君を残す全メンバーがゲームに取り込まれました。
そこまでくると諦めが、特に富田さんが諦めた様子でキサララギさんと共に狩りに出かけようと雰囲気を盛り上げようとしてくれました。結果は成功です。
リアルな感触に慣れるのは大変苦労しましたが慣れてしまえばゴブリンでもオークでも勝てましたし、何より「死」がありませんでした。
ある時、ボスモンスターに当たってしまい富田さんのライフポイントがゼロになってしまい焦りましたが、蘇生魔法を施したところ生き返り、富田さん曰く「ただ倒れていて意識があった」と言うことでゲームでの「死」は現実の「死」とは直結しないことが分かりました。
私は「死」を恐れていましたが、それを聞いて安堵しました。
ミドガルズくん、私は君が思ってくれているような強さは持ってはいません。
この現象と危機を恐ろしく感じていました。それでもギルドマスターとして強くあろうとしました。
その後は狩りをしたり料理をしたり現実世界と変わりない生活をしました。
ただモンスターがいて職種と力があること以外、何も変わらなかったのですから。
しかし問題が二つありました。まずは暖簾分けをしたガーネット・ムーンとパール・ムーンからのメッセージでした。
私たちは気にしてはいなかったのですが、他人から見れば二十四時間ログインしている状態であると二つのギルド、ギルドマスターの二人から指摘されたのです。
私は、この現象を話すか迷いギルドメンバー全員に聞きました。答えはノーです。
この現象がなんだか分からないのと身内のみ起こった現象であるが故、感染症ではないかと一説立てたからです。
両ギルドのギルドマスターハイネくんとグラスくんに長期有給を取って皆で遊んでいると苦しい言い訳をしました。それでも怪しまれて家に来られてしまい門前払いをしてしまいました。
二人ともいい友人です。チャットでも恐ろしく思いましたが数日経っても二人の様子は変わらずチャットは安全だと確認できました。
二人の目を盗むように狩りに出かけ日々を過ごし慣れ始めの楽しい時期に、それは起こりました。
富田さんが消滅しました。ゆっくりと身体が薄くなっていき最終的には消えてしまいました。
特別、何かをした訳ではありません。日々慣れてきた作業を行っていただけです。
そしてゲームに取り込まれていった順に次々と皆、消えてしまいました。
いつ消えるか分からない恐慌状態に安寧は簡単に壊れ、次は誰だ、どの順だと恐怖と焦燥に支配されました。狩りに行くこともなくなり部屋に閉じこもって過ごす日が多くなりました。
最後の方に取り込まれたコロコロさんと佐々木マンさんが取り込まれた順だと仮説を立て閉じこもってしまったメンバーの為に狩りに出かけたりしてくれました。
私は限界を感じていました。なぜなら彼らの立てた仮説が本当であれば最後は、私とトワイライトが残るからです。私はトワイライトを残すことに焦りを感じました。
消えたらどうなるかというのも恐怖の一因でしたが何より姪一人残して行くのが恐ろしくて仕方がありませんでした。
私は姪の為に二つのことをしました。
一つ、この手記をミドガルズくんが来るていで書きました。
二つ、ハイネくんとグラスくんに真実を伝えました。二人とも半信半疑でしたが今までのことを伝えると真摯に受け止めてくれました。
二人には今後、外に出られないであろうトワイライトの為に食料を玄関先に置いてくれと頼みました。実行されていることを願います。
最後にミドガルズくんへ、勝手に押し付けてしまい申し訳ありません。トワイライトを可愛がってくれた君なら、この手記を読んでトワイライトの力になってくれることでしょう。
私は最後まで、この現象と向き合い解決策を探るつもりです。
できれば、君がこの現象に巻き込まれないことを願います。』
レーラズ、という名前で締めくくられた手記は懸命に生きようとした人の心が沢山詰まっていた。
たったふたりの異世界ファンタジア 朶骸なくす @sagamisayrow
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