第3話

 金色の閃光がほどばしり、一直線にネフラリムへと流れると、腹の底を叩く雷撃の轟きが広場と坑道内に乱反射して分散する。

 軟鉱質のからだは剣を起点にえぐれてふくれ、無数のひびが走り、七色の光を散らして広場中に四散した。あとにはネフラリムの内容物を覆っていた膜だけが残り、やがて大気に触れて溶け消え、中身がその場になだれ落ちる。


 服にこびり付いた破片を払いながら、キライヴはピスタに駆け寄った。

 ピスタは腕を前に突き出したまま、茫然として、ネフラリムの四散したあとを見つめている。

 そこには見覚えのある人影がひとつ。


「セレネア、どうだ?」

「どうだ、じゃないですっ。もう少しやんわり助けてよねー!」

「そら、言ったとおり。大丈夫だったろう?」


 キライヴはそっとピスタに耳打ちしてみせる。


 アムリに駆け寄られ抱きつかれて眼鏡の傾いたセレネアを遠目に見て、ピスタは尻尾と耳が垂れ下がり、脚の力が抜け、その場にへたり込んだ。

 キライヴはピスタを労い、腕を組んで言葉を続ける。


「お前やアムリは初めて戦ったと思うが、ネフラリムは取り込んだものを袋のような膜に全部包んで保存する性質を持つんだ。あれは星力カシューを好み、星力カシューを含むものなら何でも取り込む。もちろん人間も例外ではない。そして、取り込んだ星力カシューの量が多ければ多いほど、その体積も増加し、からだを大きく膨らませる。

 セレネアが取り込まれる前はどれほどの大きさだったんだ?」

「えっと、さっきの大きさの半分よりももっと小さかったような。ぼくの背丈くらいの大きさで」


 キライヴに手を引かれて立ち上がったピスタは、手振り身振りで大きさを伝えてみせる。


「ならそれだけセレネアの持つ星力カシューの量が大きかったということだ。あいつは丸耳族聖型アルミネだから生来の星力カシューもそうだろうが、首から下げる星石も相当なんじゃないか」


 キライヴはセレネアと彼女の胸元を指差してみせる。セレネアの肩と胸元がひらけた法衣からはみ出すたっぷりとした胸の谷間には、光紫色に明暗する磨かれた宝珠がうずもれている。


「だが、セレネアを取り込んでそれだとすると、残りは大したことはないかもな」


 そのとき、広場の中心にいたアムリが声をあげた。

 キライヴとピスタは顔を見合わせて、セレネアとアムリの元へ駆け寄る。

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