第23話 念願のレビューを貰ったら
WEB小説投稿サイトは、スマホで閲覧することもできる。
僕は投稿した話の誤字なんかをチェックするためにこうしてスマホでも自分の作品を見ているのだが、コンテストに作品を応募してからは読者の反応の有無を調べるためにベルマークのチェックをする機会が増えた。
ちらっと情報を得るためだったらわざわざパソコンを使う必要はないからな。
会社帰りの電車の中で、いつものようにWEB小説投稿サイトのページを画面に呼び出して。
ベルマークに赤い印が付いているのを見つけて、ちょっとだけ気分が弾んだ。
また応援されたのかな。そう思いつつ、ベルマークをタップすると。
そこには青色の星マークと共に『作品にレビュー』の文字が。
それだけではない。
『インパクトのあるプロローグから始まる物語は読みやすい文章で綴られていてさくさくと読み進められます。主人公である魔王の耄碌っぷりもなかなか面白いです。これからの展開に期待します!』
何と、レビューコメント付きである。
そう。僕の書いた小説が、とうとう人にレビューされたのだ。
僕は嬉しさと驚愕のあまり、持っていたスマホをお手玉してしまった。
危ない、危うく床に落っことすところだった。
これでスマホを破壊しましたなんてことになったら目も当てられないからな。
「……何してるのさ」
アオイの呆れ声。
何してるのって……僕の小説が人にレビューされたんだぞ。これを喜ばずにいられるか。
此処には僕以外にも大勢の人がいるので声にして答えることができない。なので心の中で答えるが、アオイには僕の心の声は聞こえないので通じない。
それでも何とか僕の今の気持ちを伝えたくて、僕はスマホの画面を指先でとんとんと軽く叩いた。
それで、一応アオイには通じたらしい。彼はへぇと感心の声を発した。
「作品がレビューされたのか。良かったね、念願だったんでしょ」
そうだよ、これをどんなに待ち望んでいたことか。
つい口元が緩んでしまう。
いかん、此処は電車の中だ。こんなところで一人で笑っていたら何だこいつって目で見られてしまう。
でも……ああ、やっぱり笑ってしまう。本当に嬉しいよ、これは。
口元をひくひくさせながら再度レビューコメントに目を通していると、それを嗜めるようにアオイが言った。
「ここからが勝負だよ。レビューを貰ったことに浮かれないで、真面目に作品作りを続けるんだよ」
アオイ曰く。
レビューを貰った作品は、WEB小説投稿サイトのトップページにある『注目の作品』の一覧にランダムで掲載されるのだという。
そこに載った作品は、人の注目を集める機会が増える。人に読まれる確率が自然と上がるのだ。
「せっかく興味を持って読んでくれた読者をがっかりさせるような作品作りをしたら許さないからね」
嫌だな、そんなことなんてするわけがないじゃないか。
僕はちょっとの評価で天狗になったりはしない。むしろその名声に恥じない小説にしようって思ってるくらいなんだから。
やる気が出てきた。帰ったら早速小説を書くぞ。
……いや、その前に。レビューを書いてくれた御礼が言いたいな。
レビューを書いてくれた人のところに行って、もしもその人が近況ノートを使っている人だったら、そこにお邪魔して御礼を言おう。近況ノートを使っていない人だったら、僕の近況ノートにページをひとつ追加して御礼の記事を書こう。
読者との交流が大事だってアオイも言っていたことだしな。
早く家に帰りたい。帰ってパソコンを触りたい。
僕はスマホを鞄に入れて、うきうきとした気分で電車が駅に到着するのを窓から景色を眺めながら待ったのだった。
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