第21話 近況ノートを活用しよう
僕が『耄碌魔王に守らせたい十の公約』を書き始めて三週間が過ぎた。
応援はそれなりに貰いはしているが、レビューはまだひとつも貰っていない。
コンテストの応募締め切りまで残り一ヶ月が見えてきた……それなのに、これは流石に少しまずい。
コンテストに入賞するためには、まずは最終選考まで残る必要がある。そのために突破したいのが、読者選考だ。
読者選考は、主に読者になってくれた人からのレビューの多さで決まる。応募期間中にどれだけ多くのレビューを貰えるかが勝負の要になっているのだ。
他にも応援の数や閲覧数も関係しているのではないかと言われているが、正確なことは分からない。しかしレビューの獲得数が関係しているのは間違いのないことなのだ。
今回こそは入賞すると意気込んでいただけあって、この現状には焦りを感じる。
レビューが欲しいと騒いだところで貰えるものではないことくらいは分かっているのだが、ついそう言いたくなってしまう。
どうすれば、今以上に多くの人に僕の作品を読んでもらえるのだろう? 反応を貰えるのだろう?
管理画面を見ながら眉間に皺を寄せて悩んでいると。
「類。近況ノートって書いてる?」
同じく画面を見ていたのだろう。アオイがそんなことを尋ねてきた。
僕は首を横に振った。
「書いてないよ。近況ノートって要は日記みたいなものだしね……日記って言われても何書くんだって感じだし」
近況ノート。その名の通り近況を書いて読者に知らせるための機能なのだが、僕はこの機能を使ってはいなかった。
人によっては日記帳のように毎日更新したりしてるみたいだが、僕の場合は日記を書いても三日坊主になるのが目に見えてるし、そもそも私生活を晒すつもりは全くないし。
何となく「無理して使う必要もないか」って気分になっちゃって、手を付けてはいなかったんだよな。
そう言うと、アオイはもったいないなぁと呟いた後にこんな話をし始めた。
「近況ノートに読者との交流の場を作ろうよ」
「交流の場?」
僕が尋ねると、アオイは朗々と語り始めた。
「読者にはね、色々なタイプの人がいるんだ。積極的にコメントを残す人、コメントを書く勇気はないけど応援はしたい人、何となく作品が読めればいいやって人……そんな中には、少なからず『応援はできないけどコメントはしたいと思ってる人』ってのもいるんだよ」
応援コメント機能は、手軽にコメントを残すことができるが作品を応援しなければ使うことができない。
理由があって応援をせずにコメントだけを残したい……と考えてる人もいるのだと、アオイは言うのだった。
「そういう人たちも気軽にコメントを残せるように、近況ノートにそれ専用のページを作るんだ。気軽に誰でも自由に書き込んで下さいって書いて置いておけば、反応があるかもしれないよ」
「フリースペースみたいなものか?」
成程……誰でも気軽にコメントを残せるページね。
僕は近況ノートって日記だと思ってたから、この使い方は盲点だった。
近況ノートにコメントが付けばベルマークがそのことを教えてくれるし、どうせ使っていない機能だから、ひとつくらいはそういうページを作るのはありかもしれない。
「交流の場を作って読者たちと交流して、仲良くなったらとびきりの応援コメントを貰えるかもしれないよ。やって失うものなんて何もないんだし、作ってみたら?」
僕はアオイの言葉に背を押されるように、近況ノートのページを開いた。
へぇ……近況ノートってこうなってたんだな。本当に気軽に書ける日記帳って感じだ。
近況ノートの執筆ページには、タイトルを書き込むところと本文を書き込むところがあった。
作ろうとしてるのはコメント用のページだから、タイトルも本文も簡単なものでいい。無論、交流を促す言葉も忘れない。
『コメント付け用のページです。作品の感想など、思ったことを御自由にお書き下さい。此処が良い交流の場所になることを願っております。』
内容を確定させて、ページの作成を完了させる。
「こんな感じでどうだ?」
「何か事務的な感じだけど……いいんじゃない? あるとないとじゃ大違いだよ」
アオイは満足そうだ。
「コメントが付けられたら、できるだけ返事はしてあげるんだよ。そうじゃないと交流の場にならないからね」
「分かってるよ」
僕は頷いて、近況ノートのページを閉じた。
此処に、ひとつでも作品の感想が書き込まれることを願って。
そして、そこからひとつでも多くのレビューに繋がるように。
今日も、頑張って小説を書こう。
僕は書きかけの状態で止まっていた小説の執筆を再開した。
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