第17話 自分は此処にいると声高に叫べ
三十分ほど読書の時間を満喫して、さてそろそろ書くかと小説管理のページに戻ったら、ベルマークに赤い印が付いていた。
何だろうと胸に期待を膨らませてチェックしてみると、『エピソードに応援』の文字が。
自主企画に参加してるお陰か、嬉しいことに最近割と応援を貰っている。
やっぱり自主企画に参加して良かった。この調子で読者が増えてくれればいいな。
ちょっぴり上向きになった気分で小説のデータを画面に呼び出すと、頭の中に響くアオイの声。
「類は自分の小説を多くの人に読んでもらうためにどんなことをしてる?」
どんなこと……って言われても。
思いつく限りのことはしてるけど、蓋を開けてみると大したことはしていないというのが実情だ。
自主企画に参加して、スマホで作品の更新を宣伝するくらいである。
他にやれることなんてないんじゃないか?
そう思っていると、駄目だねぇとアオイが溜め息をついた。
「交流の輪を広げることも、作家にとっては大事なことなんだよ」
「交流の輪?」
問い返すと、アオイは待ってましたと言わんばかりに説明してくれた。
「類は、自分の作品を読んでくれた読者に興味を持ったことはある?」
読者になって応援という形で足跡を残してくれた読者のことを知る。
その人がサイト上でどんな活動をしているか。自分の作品を持っているか。
もしも作品を持っていたら、どんな作品なんだろうと興味を持って読んでみたか。
ただアクションを受け取るだけじゃない。自分からも足を伸ばして色々な場所に出かけ、交流の輪を広げること。それが自分の作品に興味を持ってもらうためには大事なことなんだよとアオイは言った。
「人間、応援されると嬉しいものだよね。どんな人が応援してくれたんだろうって、少なからず興味を持つものでしょ? そこから少しずつ交流を始めていくんだよ。ひょっとしたら、そこから読者と作者の関係が始まるかもしれないからさ」
このWEB小説投稿サイトでは、報酬の見返りにレビューを送ることは禁止されている。
しかし、自らが興味を持ってレビューを送ったり応援することは推奨されている。
自分の小説に興味を持ってもらう前に、自分から動くのだ。
色々な人の書いた小説を読んで、応援して、気に入ったらフォローしてレビューを書いて。
そうしているうちに、ひょっとしたら自分のことに興味を持ってくれる人が現れるかもしれない。
作品を読んで、応援してくれるかもしれない。
引き篭もりがちな人には他人の興味の目は向かない。それは現実世界と一緒だ。
宣伝行為だと言われたっていい。自分から動かない者に明るい未来は開けないのだ。
「ただ書くだけじゃなくて、自分が読者になるんだよ。自分は此処にいるんだよって声高に叫ぶんだ。それは決して無駄なことじゃない。それを見ていてくれる人は、必ずいるはずだからさ」
自分の存在を宣伝する……か。
確かに、存在が知られなきゃ作品を読んでもらえることもないよな。
それなら、作品に興味を持ってもらうために、自分から足跡を残してみようと思う。
現実世界では出不精な僕だけど、自分の小説を世に広めるためだったら努力は惜しまない。
やってみよう。少しずつ。結果が実になるなんていつになるかは分からないけど、絶対に無駄なことじゃないと信じて。
僕はサイトのページをそっと閉じて、アオイの言葉に答えた。
「これからは……サイトを巡る時間を増やしてみるよ。多くの人に、まずは僕という存在を知ってもらうために」
「うん。頑張れ」
アオイの応援を聞きながら、僕は第四話の完成を目指して一生懸命にキーボードを叩き続けたのだった。
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