第121話 泥棒

 バイト先のラブホに泥棒が入った。

 シフトは私一人、追いかければホテルは無人になってしまう。

 私は少し迷ったが、後を追った。


 外に出ると大雪、足元が悪く上手く走れない。

 泥棒は素早く角を曲がって走り去った。

 除雪作業中の作業員に走り去った男の事を聞く、東洋系の外国人が答える。

 あっちに走って行った。

 道路作業員の作業服を着て、オレンジの蛍光ベストを身に付けている。

 目立つはずだ。

 私は人に尋ねながら雪道を走る。


 同じような作業服を着ている集団に出くわした。

 私と目が合うと走り去る男。

 あの男だ。

 私は追うことはせず、走り去った男の事を尋ねる。

 派遣社員で今日の作業の為に集められた1人だと知る。

 誰かが男の身分証を差し出した。


 私は身分証を受け取り、ホテルへ戻る。

 幸いホテルには客はいない。

 警察に電話して身分証を渡す。

 これで安心だ…。


 ホテルを留守にして良かったのか?

 そもそも何を盗まれたのだ?

 渡した身分証は、本当に男のものなのだろうか?


 様々な不安が込み上げる。


 私は正しいことをしたのだろうか?

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