第69話 溶ける

 バイトでラブホに出勤した。

 交代もおらず、事務所に1人、清掃途中の部屋が1部屋あった。

 私はスーツを着ていた、ネクタイを結ぶのに手間取っている。

 事務所は5階にあるようで、清掃中の部屋は401号室だ。

 エレベーターからクリーニング屋が上がってくるのが見える。

 1枚シーツを朝の納入時に忘れたと言って、私に手渡して帰って行った。

 私は401号室へ向かった。

 部屋は緑色のスライムが床を浸食し始めていた。

 早く終わらさないと…掃除できなくなってしまう。

 焦るのだが、この部屋は冷蔵庫以外にもドリンクや、つまみが棚の至る所に置いてある。

 冷蔵庫以外に置いて、勝手に飲み食いされても解らないじゃないか…。

 そう思い、私は回収を始める。

 足もとはスライムで満たされていき、サンダルが溶けだした。

 もう清掃は無理だ、私は部屋を出る。


 事務所に戻ると、他のアルバイトが、つまみを置いたことを咎められていた。

 今は、つまみより、部屋から溢れだしたスライムの心配をしなければならないのに…。

 気が付くと事務所にもスライムが入り込んでいる。

 説教は終わりそうもない。


 このまま、皆溶けていくんだ…。

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