第62話 記憶
暗いゲームセンター。
『UFO』という赤い看板、狭い階段を地下に降りて入るゲームセンター。
ドアを開けると電子音が聴こえる。
暗い店内はディスプレイの青白い光だけで、隣の人の顔も良く見えない。
幼い私は、そこの筐体に座る。
店主が私にクリームソーダを持ってきてくれる。
緑の液体、気泡が浮かび筐体の光が透ける細長いグラスは、とてもキレイだと感じる。
目の前に2000円分くらいの100円玉が置かれる。
私は、クリームソーダを飲みながら、ゲームに興じる。
なぜだろう…とても寂しく、悲しい気持ちになる。
不安というより寂しく、それを忘れるかのように私はゲームに興じる。
いつまでも…いつまでも…目の前の100円玉が少しずつ減っていく。
それが堪らなく不安を掻き立てる。
溶けかけたクリームソーダのバニラアイスを長いスプーンでかき混ぜて、甘いソーダを飲む。
何枚かしか残っていない100円玉を握りしめ、私は店の奥でうずくまる。
ゲームの電子音だけが耳を塞いでも聴こえる。
早く…早く…。
泣いていた。
心細くて泣いていた。
目覚めると私は泣いていた。
そうコレは記憶…私の幼い時の記憶。
1日のほとんどを独りでゲームセンターに預けられていた幼い頃の記憶。
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