第55話 カエル
誰かと風呂に入っていた。
女性か男性かも解らない。
浴槽に浸かりながら、身体を洗っている私に洗面器を差し出す。
洗面器には大きなカエルが入っている。
洗面器で飼われている様に水草などが配置されており、カエルもスポッと大人しく入っている。
私は、そのカエルを手に取る。
大きいカエルは手に持つとペチャッと平らに潰れ、手にヒンヤリとした感触と共にまとわりついた。
決して不快ではないのだが、私はそのカエルを憐れに思い、窓の外にいる誰かに手渡す。
外は水田が広がっており、カエルを手渡したのは女性のようだ。
「あそこまで泳いで行ければいいのだけど…」
そんなことを呟きながらペチャンコのカエルをそっと水に浮かべる。
プクッと膨らんだカエルはスイスイと向こうへ泳いでいく。
(あのカエルはきっと向こうへ行けるだろう)
そう思って、私は風呂場の窓を閉めた。
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