第33夜 万能感

 暗い部屋で笑っていた。

 壁には見たことも無いような数式が書き殴られていた。

 不思議な感覚だった。

 全てが理解できる。

 その数式も、この世の成り立ち、宇宙の全てを理解できる。

 考えることがない万能感に浸っていた。


 こんな簡単な事だったのかと、半ば自分に呆れ、その全ての知識を得た自分の喜びを感じていた。

 伝えなければ、誰かに、この世の全てを伝えなければ、部屋から出ようとするのだが、小さな猫足の風呂に浸かった身体が動かない。

 首だけがクルクルと回るように動くだけで、身体が動かない。

 全てを知ったのに、全ての疑問、質問に答えられるのに、誰とも会えない。


 そんな自分の境遇を笑っていた。

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