第32夜 コンタクト

 通販なのだろうか、コンタクトレンズが届いた。

 自分で頼んだのだろう、私は迷いなく目に張り付ける。

 違和感はない。

 薄い茶色のコンタクト、眼球にひび割れたようなデザインが施されている。

 私は満足気に鏡の自分を見ている。


 軽トラックが走ってきた。

 知り合いの女性が運転している。

 私がコンタクトをしていることに気付き、何事か聞いてくる。

 どこで買ったのとか、変わったデザインだとか…。


 私は、コンタクトを外して見せようとするのだが、外し方が解らない。

 早く見せろと急かされるのだが、外し方が解らない。


 そのはずなのだ、私はコンタクトレンズなどしたことはないのだから…。

 なぜ買ったのか?

 そもそもどこで買ったのか?

 色々、聞かれるのだが、何一つ答えられないのだ。

 青空の下で、質問攻めにされて途方に暮れている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る