第34夜 弱いから

 ゾンビに襲われていた。

 私は逃げない。

 逃げることを諦めているから…。

 私は恐怖から逃れる為に、恐怖を受け入れる。

 自らが恐怖に変われば、もうその恐怖におびえることは無いのだから。


 私は抵抗せずにゾンビに手を差し出す。

 噛まれて、しばらくすると、彼らと一緒にフラフラと街を徘徊している。


 でもずっと考えている。

 私はコレでいいのか?

 ずっと考えながらフラフラしているだけ、夜の街は暗く寂しく、周りは私と同じように呻きながらヨロヨロと彷徨うゾンビの群れ。

 怖くはない…むしろ憐れに思える。


 私は思った。

 彼らも恐怖から逃れる為に恐怖を受諾し…そして懺悔を吐露しながら彷徨い続けるのだと…。


 私達は恐怖の対象。

 人が恐れるのは自分自身の弱さを視ることなのだと知った。

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